519話 私の生き方 

『私の生き方』という本を一昨日阪急の駅売店で見つけて購入。

私の行き方 阪急電鉄、宝塚歌劇を創った男 (PHP文庫)


著者は阪急グループの創始者小林一三先生である。(一三は「いちぞう」と読んでね。ひとみちゃんじゃないのである)


以前に伝記は3冊ほど読んだことはあるけれど、ものすごくおもしろい人である。この人のアイデアがなければ、現在の阪急はない。ターミナル駅にデパートをくっつけるというのもこの人のアイデアである。デパートの食堂で、皿盛りのライスに福神漬けを乗せてウスターソースをかけて出せ、などと言い、大ヒットさせている。人口のおっそろしく少ない宝塚行きの鉄道路線の社長になったら、宝塚に温泉を核にした娯楽施設をつくり、沿線の宅地開発をして鉄道を事業として成り立たせる。宝塚歌劇はその延長線上にできたものであり、その宝塚歌劇の成功があったから娯楽部門を拡大して「東宝」だってできたんである。


そう考えると、この人がいなければ「ベルサイユのばら」も「ゴジラ」もこの世になかったかもしれないのである。


そういう屈指のアイデアマンである小林翁が、昭和10年に出された本である。若いビジネスマンに向けて書いている。


筆者は、10年前のビジネス書を現代を知る目から読むとどう映るんだろう、という興味津々で読んでみた。


結論からいうと、「なんだ、70年前も今もあまり変わっていないじゃないか」


小林翁の語る若い会社員へのメッセージは、まったく今聞いてもなんの古さもない。


ということは、時代として現代というのは「とんでもなく悪い」と筆者などは思っていたが、そうそう悪い面ばかり見るもんじゃないよ、という気がしてきた。もっと何とかなりそうかもしれない、とそういうふうに思った一冊だったのである。