1265話 何を見ている

人の歩き方を観察していた。


人の歩き方を観察していると思っていた。


よ〜く見たら、振り出す脚しか見ていなかった。


歩くという行為で、主として仕事をしているのは、振り出される脚ではなく、地に着いている方の脚である。後に伸びる方の脚である。


そのことに気づいて、後に伸びる脚の動きを注視して人の歩き方を観察したら、まったく違って見えた。


まだ違って見えただけで、何がわかったというわけではなけれど、見るべきものが見えていなかったことだけは解った。