270話 回れ!股関節 

午後にU中学陸上部を見に行かせてもらう。

車で行ったのだが、駐車場の門が8分目がらがらっと閉じられており、「関係以外ははいっちゃだめよ。用事のる人は職員室まで言いに来てね」という意味のことがていねいに書いてぶら下がっている。いつものように「ある意味関係者だかんね」と無視して入る。

いつもの倍以上も車が止めてあり、あまり空きスペースがないところを一番奥まで入ってようやく1台分のスペースを確保する。

今日は、Kちゃんをはじめとして3人ほどのからだの整えをする。田辺ッちが「この娘は素質があります」という一年生は本当にからだが柔らかい。3年前にハードルで全国大会まで行った男子生徒の調整をさせてもらったことがあったが、その彼を見た時も「なんて抵抗なくよ〜っく回る股関節なんだろう」と感心した。それ以来である。足の指などを使って調整を試みたのだけれど、くんにゃり、くんにゃりと実にうまく連動するのである。

私のもともとの出身はヨガである。ヨガというと「柔軟性の本家本元、元祖、本家、家元、宗家」という印象をお持ちではないだろうか。確かにヨガのポーズはそういう印象を与える。

しかしながら、そういうはた目に「おお、いかにもヨガ」というポーズができることと、健康度や心の柔らかさというものは正比例しないのである。開脚して足が限り無く180度に近く開くこととその人の日常の疲れにくさというものは正比例しないのである。

整体と合わせて人のからだを学ぶようになり、例えばひとつひとつの椎骨(背骨)の弾力が大事だなあとか、股関節や肩胛骨といった地味な関節の何気ない動きがスムーズに行くことが大事だなあと実感するのである。そしてからだの一部分が柔らかく派手にポーズができることよりも、全身が滑らかに協調して連動して助け合って、協力しあって動くことの方が大切だなあと思うのである。

で、この「一年生の女の子」は、前屈やら開脚やらの柔軟性は調べていないから分からないけれども、足の指やら足首やら股関節の回転(開脚ではない)などは本当に柔らかい。だから全身が力まないで動くから、まだまだ筋肉なんてない体なのだけれども、速く走れるのだろうなあと感じたのであった。