361話 国際的快気法
サラシャンティの清水さんから留守電が携帯に入っていた。
「今日○○ンディーさんというスリランカの方が体験にいらしゃいますので、よろしくお願いします。私はちょっと出かける用事があるので、入会手続きとかの説明に伺えないのでよろしくお願いします」
とのことである。男性か女性かもわからない。言葉が通じるか否かも不明である。
サラシャンティに到着。いらした、いらした。褐色の肌のくっきりまなこの女性である。
「ニホンゴ、デキマスカ?」
「少しね」
○○ンディーさんは、8年前に来日。本国と行ったり来たりの年月で、現在は日本で英語を教えているとのこと。
本来は「ミュートヨガと快気法」という訳のわからない講座名の私のクラスよりも、シンプルに「ヨガ」をうたっているクラスを希望していたのだけれど、「行ける時間にない」というので、どうも「やむなく」「しかたなく」我がクラスを体験受講したということになったらしい。
「汝、何故ヨガをなさんと欲すか?」
と問うたところ
「太ももやウエスト、太くなりけり。引き締めんと欲すなり」
とのこと。さらに
「このクラスは何と言うクラスか」
と問うて来たので
「ミュートヨガと快気法なり」
と答える。
「カイキホウとは何か」
と問うてきたので
「快とは気持ちいいとの意味なり。汝、『気』なる日本語を理解するや?」と問いかけたところ「分からぬ」との答え。そこで
「なんじ、映画『スターウォーズ』を見たことはあるかなきか?」と問いかけた。
「見たことアルヨ。でもエピソード2よ」
「よろしい。それなら十分理解できるはずだ。『気』とはフォースのことである」
「オオウ!エナジー」
「今一つ、大きな特徴がある」
「フンフン」
「一般的にヨガにかかわらず、決まった形があり、先生の真似をしてそのポーズや動きをするというのが、レッスンの進行でベーシックなものである」
「ハーハーン?」
「快気法には決まった形がない。きっかけになる動きは誘導する。しかし、その後あなたは、頭で考えて動いてはならない。体に問いかけ、体自身がどう動きたがっているかに従わなければならない」
「オオウ!」
「頭でやるのではない。ボディのマインドに従うのである。」
「オオウ、リスニング、ボディ!」
かくしてレッスンは始まった。ようするに「のび」「あくび」の「伸び」をどんどんからだから引き出そうというものである。
○○ンディーさんもはじめてにもかかわらず、そこそこ気持ちよく自由に動いていらっしゃった。受講後は「リスニング・ボディ」は難しいと言っていたが、なかなかのものである。
しかし、自由な伸びといっても、国・人種が違えばずいぶんと違うものである。あおむけの動きをメインにやったのだが、頭の方に伸ばした手が、日本人の伸びではまず見られない角度に曲がるのである。新鮮で非常におもしろかった。スリランカの踊りというのはよく知らないけれど、その手の動きはインド舞踏やベリーダンスなどに見られる動きと非常に似通っているのである。
その国の踊りというのは、まさしくその国に住まう人の体から出てきたものであるとの思いを強くした筆者だったのである。それがその体の特性を強化し、活かすことになるのであろう。
私が行っている整体も、基本は正座であり、そんきょであり、四股である。
和歌山市駅も夜な夜な若者が集まり、グループでストリートダンスを練習し、パフォーマンスしている。それはそれでなかなか見事である。しかし、一方でその横で黒人がただリズムに合わせて体を振るだけで到底かなわないだろうな、とも思うのである。
ストリートダンスも結構。その一方でストリート「能」「狂言」「舞い」などが出てきて、その善し悪しが分かる目が日本人にもっと育ったら、また面白かろうにと思ってもいるのである