515話 大人が変わる生活指導 2

「ここまでやるか」というレベルで、あらゆるうまくいかないことを想定して、可能なかぎりつぶしていく。

書店には成功本がたくさんあって、成功セミナーなんてのもたくさんある。もちろん有益なものもたくさんあるけれども、そうでないものも多いように思う。

たまにそういう本も読むが、たいていは「うまくいっていない」時である。だから「これさえやれば、そうだ、うまくいくんだ」と念じて読むけれども、そういう時はできるだけ少ない行動で、大きな成果をのぞむから、たいていうまくいかないのである。


冷静な時に読むと、そういう本は、自分の中の「楽して儲けたい部分」に響いているのが分かる。ようするに「打ち出の小槌」がほしい心である。そういう自分の心の部分が求める成功というのは、楽して儲かることなので、楽して儲からなかったら失敗である。すると、さらに別の打ち出の小槌がほしくなる、という循環に陥りがちである。


儲かるか儲からないかだけしか物差しがないと、なかなか成功しないし「うまくいっている」ということにはならない。自分の予定している成果がもたらされないと「ついてない」ということになる。


原田先生の方法だとこれが変わる。あらゆる「うまくいかない事態」を予想し、その対処というものを準備したり回避する方策を講じたりしていくと、うまくいかない事態というさえ予定通りということになる。目標を達成するという物差し以外にも、副産物として得られるものがこの方法の方が遙かに多くなるのは感じるのである。


それに、何も準備しない場合には「ついていないなあ、運がないなあ」と思われる好ましからざる事態が、準備をすることによって「当たり!」に変えることができる。


打ち出の小槌とは正反対の考え方のようで、手間はやたら増えそうだけれども、自分の中の「怠慢こかないで、やることをやって、一つ一つを今を満たしていこうぜ」という心に響くのは確かだ。