579話 整体犬すずな

愛犬すずなに手を出すと、ものの見事に調整で疲労のたまっている指の部分を選んでピンポイントでなめる。上肢第二調律点などは、実に念入りになめてくれる。


先ほど、部屋に入れてやって横になって向かい合っていると、筆者が調整の必要を感じている腹部第四調律点をピンポイントでなめている。


恐るべし、整体犬すずな。


そういえば、犬はけがしたところをなめて治すというけれど、けが以外の調整の必要な部分もまた、手当ならぬ舌当てで調整しているような気がしてきた。


それで、気心の知れた飼い主を見て「う〜ん、ちょっとここに気をいれておかんといかんワン」などと思っているやも知れぬ。


「ペットによる癒し」なんて表現は、「ペットという無垢な存在が身近にあることで、精神的な安らぎや孤独感の解消に結果的に貢献している」というような意味合いで使われていると思っていたが、実はもっと具体的に犬たちは行動してくれているのだ。


散髪屋のN階さんをみて、うれしょんする姿からは想像できなかったが、すずな、齢一年五ヶ月にして、整体のスキルを使いこなしているのである。他の犬はどうなんだろう。


知らぬは人間ばかりなり、かな。