624話 武術的ベリーダンス
海老原べーリーダンス・ワークショップは、「魂の武術舞踏 和の身体操作塾」と言ってもいい中身であった。
表面上のつじつま合わせを一切廃し、なまなかの武道家では太刀打ちできないのではないかと思われるほど、徹底的に中を動かす、内側から動く。骨から動く、芯から動く。
ようするに「魂が形になる」(ようするに以下は筆者の表現、海老原先生がこう言われたわけではない)というようなことを追求される。
「座骨から動くの!」
「座骨に乗るの!」
「軸を立てて!」
「背骨を前!胸じゃないの、背骨から動くの!」
「ようするに丹田よ」
などというような用語がぽんぽんと飛び交う活気あふれるミニワークショップであった。
終了予定の9時になって
「時間が来ましたけど、会場の使用時間と参加のみなさんの時間は大丈夫かしら」
と海老原先生が気にされた時、数名来ていた、大阪でベリーダンスを習い始めたんですという女性たちは、空中を拳でびしびしと叩きながら、海老原先生に「もっと、もっと(やってください)」と叫んでいた。
そういえば「質問は?」という声に、質問が非常にたくさん出てきたのも、特徴だったかもしれない。それだけ短時間で、海老原先生は、参加者をとりこにしていたのであった。(河野先生はどうだったんだ、とそちらに興味をお持ちの方もおられると思うが、もともと河野先生が、海老原先生という素敵なパワフル・ハートフルダンサーを、関西の方々にぜひとも紹介したい、という思いで企画された対談であったので、講習内容も対談内容も、海老原ワールドを引き出すということに徹底されていたように思う)
一通りを体験した後に筆者が感じたことは、海老原先生の時間感覚は、どうも10年あたりが一区切りになっておられるようである。
10年真摯に追求して、
「まあ、第一段階」
さらに10年真摯に追求して
「ちょっと分かってきたかな」
というようなスケールで考え、行動されているようである。このスケールの前には「一喜一憂」とか「ちまちま」というようなこちら側の「重箱の隅をほじくって、やらない理由を探す」というような感受性が吹き飛ばされてしまう。
見事に吹き飛ばされた筆者であった。
対談終了後、海老原先生のホームページをのぞきに行った。
【よくある質問と回答】というようなコーナーがあった。いろいろな質問に答える構成の最後の質問
Q どういう人が踊りが上達するのでしょうか?
海老原先生の回答は、端的にして簡潔明瞭、明快、真理であった、
A 「 努力 実行」
至言である。それを実行してきた者にのみ許される回答である。