634話 日本の血圧は心配か 2
それから、このCMは
「日本人の4割が高め!え〜、そんなに血圧の高い人がいるの〜!!!」
という視聴者のリアクションを期待している作りになっているのは明白であるが、視聴者の中には筆者のように、いちいち「それってどいったいういうことなんだろう」と意味するところを考え込む、素直でない視聴者がいて、さらにいちいちそれをブログに書く暇人は想定されていないかもしれない。
しかし筆者は、考えたのである。
4割が高めだと言えるということは、基準値があって、それと比較して高めと評価できるということである。それでは、その基準値というのは何か?と考えると、当然のことながら平均値との比較であると考えるのが妥当であろう。
すると、4割の人が高めだという平均値との比較データが出るためには、4割の人が高めにランクされるに見合うだけの、低めの人が必要だということになる。
つまり、
「あまり知られていないことですが、日本人の約4割が血圧が高めというデータがあります。」
の裏側には
「さらに、あまり知られていないことですが、日本人の約4割が血圧が低めというデータがあります。」
というデータが隠れていて
「さらに、さらに、あまり知られていないことですが、日本人の約2割が血圧が高くも低くもない、というデータがあります」
ということではないの。
しつこいようだが、この「血圧」という部分を身長に変えると、このCMの本質が見えてくる。
「あまり知られていないことですが、日本人の約4割が身長が高めというデータがあります。」
ということは、
「あまり知られていないことですが、日本人の約4割が身長が低めだというデータがあります。」
というだけの話じゃねえか。
血圧の基準値というものが、平均値ではなく、「この数値でないとずぇ〜ったいに健康にはなれない」という明白な医学的な根拠に基づいた基準値があって、日本人の平均血圧が、それを年々着々と上回っている、ということであれば、話は変わる。
そうであれば、この製薬会社には、ぜひそういうふうに改訂したCMの放映をお願いしたい。
もしも4割が平均値と比較して高めである、ということを言っているだけだとしたら、
「さらに、さらに、さらに、あまり知られていないことですが、つまり、血圧というのは、けっこうばらついているものなんです」
ということを語っているだけかもしれないのである。