633話 日本の血圧は心配か?
「あまり知られていないことですが、日本人の約4割が血圧が高めというデータがあります。」
「日本の血圧が心配です」
というようなナレーションの医薬品のCMを見た。
都会をあるく多くの通行人が全て、入院時に着るような患者をイメージさせる服装でよろよろと歩いている映像がバックに流れる。
このCMは、「あるある大辞典」のように「ねつ造CM」としてやり玉に挙がることはないだろう。
データは、きっと本当のことを言っているんだろうから。そして、CMの内容自体は、どのようにつついても一切問題がないように作られている。だって
「日本の血圧が心配です」
と言っているだけだもん。
「納豆を食べるとダイエットできる!」と言ったから、あの番組は袋だたきになったのであって、「納豆を食べるとダイエットできると嬉しいわ!楽しいわ!」「できるかどうか心配だわ」という番組であったなら、なんの問題もない。
それに「4割の人が高めだ」と言っているだけで、「4割の人が、早急に治療をしないと、生命の重大な危険にさらされる危険性のあるような、高血圧症だ」と言っている訳ではない。
けど、なんとなくそういう錯覚を起こす人がいてもおかしくないように上手に作っている。
よく考えてみると、最近急に4割になった、と言っているわけでもない。もしかしたら、そうなのかもしれないが、少なくともCMの中では「いついつからそうだ」、というのにはまったく触れていない。
もしかしたら、10年前もそうだったし、20年前もそうだったし、戦中もそうだし、昭和初期もそうだった、というのが本当かもしれない。
そうすると「生活習慣も運動量も、現代よりもずっと足りていて、「油もの」や「肉類」がはるかに少なかった食生活の時代も今も、明らかに高血圧が原因であると断定できる疾病による死亡率は、ほとんど変わっていません、という結論につながるデータの一部である可能性もある。