730話 鬼っ子でヨガ合宿

今日から合宿である。


昨年の秋に鬼っ子の「噛む断食」に参加させて頂いて「鬼っ子広場」のことを知った時から「合宿をやりたいな」とは思っていたけれども、こんなに早く実現するとは予想より遙かに早い展開である。


O原先生から再度のお誘いをして頂けたこと、O台さんが快くマクロビオティック料理長を引き受けてくださったことなどで、開催に向けた動きが加速したのであった。


開会は1時である。が、会場は旅館ではない。いかに素敵な建物とはいえ、毎日人が掃除をしているわけではないし、密閉された空間でもない「呼吸する木の家」なので、ちょっと事前のお掃除などが必要かなと思ったのが数日前。


突発的に「可能な人は10時頃に来て、一緒に掃除しませんか」とお誘いしたところ、ありがたいことに8人乗りワゴン一台では収容しきれない人数の方が「行きまっせ」とのことで、せっせとお掃除から始まる合宿であった。


午後に2コマの「体の中に埋まっている自然を掘り出すヨガ講習」の後はO台マクロビオティック料理長の指揮のもと、参加者一同で玄米菜食づくり。


元々常備してあるコンロに、カセットコンロを持ち込んではいるが、大人数なのでもっと火がほしいと、薪ストーブといろりにも点火。


いろりに火を点けて、大火力を維持するのに、人知れぬ才能を発揮したのが、GWで野球部が休みである「炎の料理人ひろき」であった。しかし、彼は炎「を」料理するのに長けているのであって、彼に料理をさせると恐ろしいことになることは親父である私は知っている。


ちなみに、あさちゃんもひろきも今回は「準スタッフとして参加し、率先して運営にいそしむべし」という掟で参加しており、あさちゃんもまた薪ストーブの担当、「火吹き竹のアーチスト」として、「鍋よりも下」の部分を支えていたのであった。


絶品の玄米菜食の後は、入浴。神戸のK賀さんが急遽車で参加してくださったため、同じく宝塚から車で参加のインスパイアO澤さんの車と合わせて三台となり、全員が乗れるので、車で15分ほどの「音の花温泉」へと向かう。


ちなみに、O澤さんは鬼っ子のことを「いやあ、近いですねえ。宝塚から40分足らずですよ」と言われていたが、これは鵜呑みにしてはならない。いくらなんでも普通の走りではその時間では到着しない。ちなみにO澤さんの愛車はぎらぎらのスカイラインであった。


音の花温泉は、予想していたよりも遙かに大きなゆったりした浴槽で、内湯だけでもけっこうな大きさなのであるが、露天風呂はそれに輪をかけて大きい。そして何より泉質がいい。たいへんけっこうな湯であった。


ちなみに、更衣室がフローリングでやや滑りやすい素材のようで、温泉スタッフの人が2名、手に手にモップを構えて、濡れたところがあったら即座に拭き取ろうという気合い満面の表情で待ちかまえている。そして濡れた足で歩いた人の後を、即座に拭き取る。


温泉スタッフの方々の、「一滴の水滴もフローリングの表面に残すまい」という気迫のモッピング
は、冬季オリンピックカーリング代表、『チーム青森』のごとくであった。音の花温泉、更衣室スタッフでカーリング「チーム生駒」か「チーム音の花」を結成すれば、けっこういいところまで行くのではないか、と勝手な想像を広げる筆者であった。


しかし、もしかしたら、温暖な湯気のもとでは驚異的な能力を発揮するが、寒冷地ではさっぱり能力を発揮できない「熱帯雨林」のような性質かもしれず、チーム生駒の結成はまだ早いかも知れぬ、と勝手にその先を想像する筆者であった。


さて満ち足りた気分で鬼っ子に帰って10時過ぎ、続々とすぐに寝に行く参加者のみなさまであった。筆者も全身くまなく心地よく疲れていることを感じていた。


けっして「くたびれた」という感じではないけれども、「フルに使った」という充実感のもとに、さっさと寝たいという気分がふつふつと湧くのであった。


たしかに、料理一つとっても、電磁調理器のスイッチを入れたり、ガスコンロのスイッチを入れるのにはなんら体力はいらない。


しかし、いろりの火や薪ストーブの火を維持するのに使う火吹き竹に必要な肺活量だけでも、たき火がうまくないだけに相当量のものが必要であろう。


現代生活というものが、以下に部分的で偏ったものかということを、様々な角度で思い出させる合宿であった。


そして、電球だけの明かりの鬼っ子広場は、夜は暗いものだ、という当たり前のことを思い出させてくれ、体全部を使って昼間生活し、夜暗くなったら、瞼は重くなるものだ、というまったく当たり前のことを、とっても体が喜ぶんだ、ということをひしひしと感じた筆者であった。