772話 ○かまえ商店
近所にガレージがある。
スレート葺きっていうのか、簡単な屋根がついていて、シャッターがついていて、AとかBとか記号がシャッターに書いてある、というようなガレージ。
L型になっていて、西に向いて表通りに面して4庫。南に向いて横町に面して1庫。ちなみに4庫のシャッターナンバーは「A、B、C」ではなく「錦 橘 桂 松」である。
その南を向いてのシャッターの横に「○かまえ商店」というラミネートパックの看板が掲げられていた。
シャッターの横には「たばこ」と大書された、同じくラミネートパックの看板が掲げられている。
問題はそこからである。
営業時間 3:00〜5:00
と明記してある。
店舗としての体裁のない、ガレージである。一日限定二時間のみのタバコ屋である。
なぜ、そうしてまで営業するのか、謎である。だって、そのお店の前には、ラミネートパックでこれまた気合いを込めて「100円」と大書した看板がついた、飲み物の自動販売機が二台鎮座されているのである。
なぜ一日に2時間のみ営業しようというのか。どうして自動販売機に全面的にまかせようとはしないのか。
なぞは深まるばかりである。