774話 ドーナツで子どもを釣る

テスト中なので、お昼で中学生組二人が帰ってくる。


昼飯を一緒に食いながら聞くと、それぞれ、そこそこのテストのできばえのようです、とのこと。


「笑っていいとも」で香取慎吾が「ミスタードーナツ」を食べており、二人の目と胃袋が爛々と輝いているので、


「ドーナツ食いたい?」


と、聞く。目が「キラリン」と輝き、頷く二人。


「分かった。ただし、12時50分までに昼食後の片づけならびに食器洗いが完了しておったら、買いに行くとしよう」


と宣言すると・・・・・、あっというまに片づく。


車でドーナツを買い求めた後、夕食の材料として、そぼろをつくるための合い挽きみんちと卵がなかったことを思い出し、そのままスーパーサンワへと向かう。


ひろきは1時40分に家を出て、自習にと出かける予定である。それまでに再度10分以上の「自宅共用部分の片づけをする」ということで、このお昼にドーナツを食べる権利が生まれることを宣言する。


すると、この「ミンチと卵」の買い物に余分な時間を費やしていると、片づけの時間はぎりぎりあるが、ドーナツを食べる時間はない、というようなぎりぎりの時間配分である。


スーパーの駐車場でつむじ風のように下車したひろとあさは、それぞれお肉売り場と卵売り場に脱兎のごとく突進し、レジで合流し、超高速で車へと返ってきた。


帰宅。


10分の片づけで、共用部分(自分の部屋じゃないところのことね)がみるみる片づく。


課題をことごとくクリアした二人は、ドーナツにありついたのであった。


まるで、テストの成績と自宅の片づけをドーナツで釣ったかのようであるが、その通り、テストの成績と部屋の片づけをドーナツで釣ったのである。


学校の成績が最終目標になるという価値観は持ち合わせていないが、良いに越したことはない。嫌でも中学校に行くことになっている以上は、そこにいる6時間とか7時間とかが、ちんぷんかんぷんなのはもったいない。


習ったことがまったく身に付いていないのでは、その時間がまるまる無駄である。


愕然とする成績を取ってから立て直しに途方に暮れるよりは、そこそこの成績を眺めている方が気が楽である。


ドーナツに釣られながらも、嬉々としててきぱきとする片づけ行動の方が、叱責・怒号に脅かされて嫌々やる片づけよりもましであると筆者は思う。


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夜は、そぼろご飯に初めて挑戦した。


レシピを見ると「酒大さじ三杯」などと書いてあったが、まったく下戸な筆者宅であり、料理酒の置きもなく、どういういきさつか「北海道の白ワイン」があったので、どうせ誰も飲まないんだからと、それをどぼどぼと使う。

炒り卵も、フライパン方式ではなく、レシピのとおりに「手間はかかるが焦げ付きなし」の湯煎方式でじっくり行う。


何か美味しく、好評である。