788話 世界のレベル

日野晃先生の


イリアムフォーサイス 武道家 日野晃に出会う


を読む。


世界屈指のダンス集団であるフォーサイスカンパニーという舞踏団がある。


そこに日本人で初めて合格した安藤さんというダンサーがおられて、この人が本のタイトルにもなっている日野先生のところで武道を勉強していた人だった。


それで、ドイツに渡った彼女は。日野先生から学んだことを『自習』しつつ、フォーサイスのメンバーにちょこっと稽古相手になってもらいつつダンサーとして活動していた。すると彼女のダンスの「ちょっと違う、何か違う動き、質、良さ」に、御大・総帥・のフォーサイス先生が、興味を持ち、経緯を聞き、即刻


「その先生を招いてワークショップをして頂くべし。断固即刻開催すべし」


となった。


そこで、日野先生はドイツに向かい、武術・武道の先生が、世界最高峰の踊り手の集団に対して


「それはあかんで、おもんないで」


大阪弁で(たぶん)びしびし稽古をつけ、フォーサイスのメンバーがぐわんぐわんと変化していく、という10日ほどの日々がつづられているのである。


そして、総帥・御大のフォーサイスさんとも、一流は一流を知るで、たちまちにして国境を越えて言葉を越えて通じ合い、日野先生をして


「この日のために、この出会いと融合のために、私は武道を稽古をしてきたのかも」


と言わしめる至高の体験となった、というドキュメントである。






「幸福ノ青いバラ 実験的演劇プロジェクト」の総帥?八木氏が常々言うのである


「津田はん、やるんやったら、世界に通用するもんを作るつもりでやらなあきまへん」



スタニスラフスキー・システム、マイケルチェーホフの『演技者』で語られるメソッドを、整体や武術の観点から、日本人の体と感性に合ったものとして再構築し、単なるイメージトレーニングに終わらせることなく、具体的な成果を上げるものにせよ、というのが彼の指令である。


日野先生の「フォーサイス、出会う」によって、「そういった武術を含めた日本の身体文化」で世界レベルと渡り合うというのが、どういうレベルなのか、ということを身近に体感したような氣がする。世界っていうのは、これぐらい遠いって言うことが身近に感じたのである。(ややこしいね)


しかしながら、その日野先生がドイツにてご披露されていた武術の様々、技の様々というものは、筆者にとってまったく理解不能な世界というわけでもない。手がかりなしの遠い境地というわけではないように思える。


もちろん、筆者に「分かる」という単語は使えない。分かると言うためには同じこと、あるいは同じレベルのことができる、ということになるからだ。


この線路の先の方の話だろうな、という線路に関しては、かなり高い確率で間違いのない路線(もしくはその近辺)に来ているものとは感じている。


だから、世界レベルの人と響き合った日野先生が、ものすごく楽しかっただろうなあというのも、おぼろげながら想像がつくのであった。


ということで、世界と響き合う日に向かい、まずは9月の公演に向けて、野江の劇団未来の稽古場で、汗を流す7月2日の八木氏と筆者と意欲的な役者のみなさんであった。