827話 氣の輪郭の可能性

『追憶ノ青いバラ』の稽古が昼から夕方まで。通常なら間に合わないスケジュールであるが、何故か今日も早い時間に予約が集中した結果、少々遅れたが稽古に顔を出すことができる。


演出のY木氏からのリクエストは「声」。


身体性が変化してと思っても、声が「舞台用に今まで使っていたのと同じ」だとすると、それは身体性が変化したことにはならないであろう、というのがY木氏の指摘である。


「声の変化がないということは、身体性の変化があったとしても、それは身体の部分にとどまっており、全体が変化しておれば当然発声に望ましい変化が出てしかるべきである」というような意味で受け取った筆者であった。


別人格になれたとして、声がいつも通りというのはあり得ない、というのは、まさに正鵠を得た指摘である。


発声は音量ではない。氣が通れば声は通る。意味が届く。体に響く。


あれこれとやってみて、身体の輪郭のボリュームアップというものに行きつく。自然体チューニングで今の体のありのままの輪郭に習熟する、ということをやって来たのが伏線になった。

身体の輪郭に置いている意識を、氣の輪郭まで広げることができると、『声が通る、意味が届く、体に響く』の状況が現れた。


これは、ちょっと使えそう。


正確に言うなら「役者の方々がこれを使いこなせるようになるとかなり面白いぞ」という手応えである。この一ヶ月半ほど、大学生組の二人にはほとんどチューニングできていなかったので、どうなるかと思っていたが、何か生まれそうな手応え。