826話 木の形は歴史だ

ビル三階の道場の窓から、道路側を見下ろすと、「ハナミズキ」の並木をちょうどほぼ真上から見下ろすことになる。


およそ、木は横から眺めるか下から見上げるかのどちらかで眺めていたのが、真上から見て、その葉の茂りがものすごく平べったく見えることに気づいた。


何故かというと、葉っぱが全部水平なのである。


下から見ると、小枝や茎で、上下の段差がたっぷりあって気がつかなかったけれど、上ではトトロの葉っぱの傘のような水平なのである。一枚の布というわけにはいかないけれど、三〜四枚のシートに葉っぱを広げて干しているような情景なのである。


木のエリアに注ぐ日光は、全てくまなく葉っぱで受け止めるのだ、という木の強い意志が感じられるのであった。「我がエリアの日光は全てくまなく頂戴しやす」という感じである。「断じて通すことなりやせん」という感じである。


木陰というのは、たまたま葉っぱにさえぎられて陰ができるのではなく、木の葉が懸命に全ての太陽光線を受け止めようとした結果としてできるものだということを実感。


木というのは何となく伸びて、なんとなく枝を張り、なんとなく葉っぱを広げているように見えて、その実、その形というのは光を求めて生き残るための懸命の努力の歴史が、そのまま形になっているのだ、と感じ入った筆者であった。