972話 着物の自然体
『いのちを纏(まと)う―色・織・きものの思想』の引用部分で、下記の部分を読んでびっくり。これって、『自然体チューニング』の最新「寝たまま・あおむけチューニング」で誘導しているのとまったくかぶるのである。
「だから一番いい形は、尾てい骨をピッと立てて、背骨をきゅっと伸ばして、頭が天井に向かっていくように、きゅっと伸ばす。それから肩を後ろへ引いて、肩甲骨と肩甲骨がすり合うぐらいに胸を張って、それをぎゅっと下におろすの、そのまま。そうすると、小さい身体でも堂々たるものになるわけよ。」
・・・と、こういう記述を読んで「そうか!」と思われたみなさんは、さっそく「尾てい骨をピッと立てて、背骨をきゅっと伸ばして、頭が天井に向かっていくように、きゅっと伸ばす。」のである。そして伸ばしていると思いつつ、実際はそこで背骨は勢いを失い、棒のように固まり、その形を保つための「力み」のみが出てくるのである。
そしてさらに「肩を後ろへ引いて、肩甲骨と肩甲骨がすり合うぐらいに胸を張って、それをぎゅっと下におろす」と、さらに肩・背中は固まり、鶴見さんの説く「姿・いきおい」の方には向かわず「うわべの格好・固まり」に行きつくのである。
筆者も、ヨガの指導員時代は、この「格好だけそれらしくする」ことが「そうすることだ」と勘違いして励んでいたものだ。励んではないか、でもどうやれば正しくそれが身に付くかということは分からなかったのだ。
さて、昨今の「自然チュー」はあおむけが最も旬である。
あおむけで外ラインを伸ばす際に、自力で「ほんの少し意識的に足首を伸ばす」ようにすると、腰を中心に上下(頭方向と足方向」に「水あめ状の拮抗」が現れる。すると、肋骨はにゅるにゅると盛り上がり、胸骨は上向きに位置を変える。
ここまで来ると肩甲骨は自然に「これ以上ない」ぐらいに寄り、肩関節は後方回転して、鎖骨は伸展し、そこに腕ラインを加えると、時として万歳を経て、後、首の湾曲強調ののち、後頭部骨がつり上がる。かくして
『尾てい骨をピッと立てて、背骨をきゅっと伸ばして、頭が天井に向かっていくように、きゅっと伸ばす。それから肩を後ろへ引いて、肩甲骨と肩甲骨がすり合うぐらいに胸を張って、それをぎゅっと下におろすの』
の通りの体が「自然と導かれるように」現れるのである。
そのまま立ってもらと「力んでいないのに威風堂々」とか、「おだやかなのに凛として」なんて雰囲気がかもし出される。
意識してやろうとするなら、それは「意識しやすい部分のみを」「意識しやすい手応えの範囲で」「意識しやすい形で」やっているに過ぎない。
意識していないところというのは、気が欠けているところである。欠けたところには、当然意識はないし、氣も流れない。そうすると、そこには流れが生まれない。全体が一つの流れによって貫かれていないものには「勢い」が出るはずがない。
それにしたって、ふだん猫背で腹腰の力が抜けたままの人が、ちょっと意識して胸を張ったり肩を降ろしたりすれば、それはそれでけっこう気持ちよかったりする。
だから、「それでけっこうできている」と登録してしまう。すると、もっともっといいものと出会える可能性を捨て去ることになる。
いえいえ、「それ」ができた時って、そういう「形だけとりあえず作った」ものの、200倍ぐらいは気持ちいいものなのです。
ということで、今月は16日も23日も二日やります。自然体チューニング(って最後は宣伝かい)。そうです。自信をもって宣伝します。だって、今提供できるものの中で、最高なんだから。