984話 上達休み

今月の初めから「イメージすりすり」を本格的に始めて、体の調子はますますよい。動きの感触もますます良い。水飴感覚もとっても良い。フレンドリー感覚もたっぷりである。


そうすると、先日の月曜日に、尺八を吹いていて、史上最高にとってもいい音が出た。


最近の筆者の『課題曲』は、「半音を上手にだそうね」のドリカムの「大阪ラバー」と、「速いテンポに指をついてこさせよう、半音も大事にね」の大塚愛の「さくらんぼ」の二曲である。


50メートル走で8秒7かかっていた足が、いきなり7秒2に速くなったような足ごたえかのような気分で指が動く。音もいい。


今「二曲合わせて5回まで、時間として20分見当」という時間制限付きで練習しているのであるが、この日の「でき」にいたく感動した筆者は、ここで「熟成発酵 上達のための一週間休み方式」を採用し、その日以来練習は禁止となり今日に至る。


これは、整体の伝説の名人、野口晴哉先生が説かれていた方法である。上達するということは無意識にできるということで、無意識にできるということは、潜在意識が受け取って体にしみこむからだ、(大胆に津田の言い方に変えてます)という前提に立ち、書道などで「今日はうまく書けた」という際に、すぱっと練習を止め、一週間休む、という方法。


一般的なやり方とはまったく逆になる。


うまくいったら「その感覚を忘れないように」というので、くり返す。スポーツなんかではおなじみである。で、うまくいくかっていったら、たいていはそのベストショットの後は、「意識過剰」になって、崩すのがおちである。


だのに、ほぼ全ての方(並びにコーチ)が、この方法のみをやっている。


「うまくいくのは無意識によるもの」であれば、その無意識を見方に付けるにはどうすればいいか、という観点に立つなら、野口先生の方法は実に的を得ている。ベストショットで終わると、身体のイメージはその最高の時点で止まっている。それを体の波の一つである「7日」間熟成・発酵させるのである。


「ベストショット以外」の雑音を、7日間シャットアウトするのである。


と、筆者は実に納得の手法であったが、残念ながら今までおためしの機会が無かった。というのは、たとえば書道や楽器演奏のような、できばえが分かるものを、こつこつと毎日していなかったからである。


まったくやらなかったわけではないが、「ううん、最高!」と言えるだけの「いきなり上出来」体験が乏しかったからである。


7日の休止期間が明けるのは月曜日である。今日で4日の「尺八禁止期間」である。この「やっちゃだめ期間」というのがまたいい。スランプで吹かないのではないのである。なんていい音が出るの!なんて指がスムーズに動くの!の直後の「禁止」なのである。


「練習したいよ〜」の意欲気力熱意十分での禁止である。


妨げられるほど燃え上がる恋心である。すくなくとも「7日の謹慎期間」終了の後の練習は、今までよりもよりていねいに、意欲的に練習に望むであろう。集注する密度は、あきらかに上がるだろう。


中断することによってすでに多大なメリットを受け取っている筆者なのである。


月曜日が楽しみである。しかし、前日の忘年会の後、六甲道のカラオケに行って、カラオケで尺八を吹きまくる、という企ては残念ながら見送りである。