1128話 歌声と身体

 
5日

今日は、尼崎の実家まで家族全員で車で出かける。


とあるアーチストのCDをあさちんが持ち込みBGMにかける。


ラップを織り交ぜた男女のコンビのアーチストである。


女性ボーカルの歌声が実にいい。


そこでより意識して聴いてみると、もうしわけないが男性のラップの部分がやかましく感じる。これは「そういう音楽」に慣れていないおっさん的感受性のせいかと思っていた。


ここまでは耳で聴いていての感想である。


身体の感度を「整体中のような、全身、表面、内部、内面、筋緊張、ゆるみ、伸びやか運動、閊え運動などなど総合的感知レベル」に上げる。


女性ボーカルの歌声では、まあ背骨が伸びる伸びる。手足が伸びやかに伸びる伸びる!
で、ラップの部分。


くっくっくっく 苦しい。


頸椎4番5番あたりが極端に緊張してくる。


一曲の中で、ボーカルとラップのたびに

「551の蓬莱が ある時ぃ!(^-^) 

          ない時ぃ(T_T) 」


反応をくり返す筆者である。


十分に「それっぽく」それっぽく耳には聞こえるラップ部分である。


女性ボーカルの方は、身体各部分を伸びやかに協調させた結果としての声なんだろうなと筆者自身の身体の反応から推察する。


ラッパーの方はどうなんだろう。


少なくともここに登場する声は、身体全身各部分の協調によってではなく、首の極度の緊張と引き替えに作り出した音声である。ひらたく言えば「無理に出している」声である。


こちらに伝わってくる身体状況は、首を突き出し、あごを上げ、両肩をつり上げ、首の後をぐっと縮めた姿勢である。


なんだ、これで指に表情をつけて手をひらひらやれば、確かにラップっぽい動きだわ。


もちろん、耳だけで聴けば「無理してるぅ」というラップではない。しかし、身体で聴くとまったく受け付けない。


ラップ的発声が、日本人の身体からは出ないような発生音なのか、それともまだ歴史が浅いために、全身を協調させてのラップ発声が見つかっていないだけなのかは分からない。


私の聞き違いかもしれないし。


しかし、まさしくラップぽい身体使いから出てくるラップぽい発声である。


その男性ラッパーの頭はラップが好きかも知れないが、その身体は、その身体の使い方は少しも喜んでいるようには思えない。


筆者は、身体の一部に無理な状況を負担させることによって成り立つ発声には魅力を感じない。