1159話 いきなり10倍速 2

雄二郎若大将と話をしていると、色々な「恐るべしの高齢の職人さんたちの話」などが聞けるので楽しいので、たまに道場に来られた時には、話を聞く。


そんな話の中で、首から「録音機」をぶら下げているということを聞いた。


お仕事は機械やプラントの製作、取り付け、修理などである。


依頼先の「空間」に確かに現実に出来上がってものが無事に据え付けられ、機嫌良く稼動しなければおまんまの食い上げである。


現場の状況や修理の状況などは、全くマニュアルにはならないようなことだらけであるのは容易い想像できる。


また現場では何社入り交じって、多くの職人を投入して指揮し、仕事を段取りよく仕上げなければならない。


ゆえに現場に現場に向かう車の中でも、帰る車のなかでも、今日はどうしよう、明日はどうしようというシミュレーションが、絶え間なくくり返されている。それも「人間かく生きるべきか?」とか「自分探し」なんて悠長なことは考えてはいられない。


具体的な寸法のあるものを、特定の空間に、複数の物、人のかかわりで少しでも速く、安く仕上げなければならない。


これって、スポーツ選手の「イメージトレーニング」の比ではない必要性と複雑性を持っているんじゃないか。


頭の中に複数のウインドウを開いて、それぞれで処理しているようなことを毎日数時間、あるいは一日中くり返している、と言えるのではないか。


首からぶら下げている録音機は、アイデアが湧くたびに録音するためである。


そうやって「右脳活性化 もう十分なんだかんね」


という状況のところへ、自意識をちょいとお休みさせて、脳の回路をちょっとつなぎなおしたというのが、今回の速読ではなかったかと分析した。


現場仕事の方々、物作りのほぼ最初から最後までを携わられている方々の、「日常」のレベルの高さにはなかなかかなわない。脱帽。


「いい仕事(ふだんから)してますねえ」