1164話 逆さ読み
今日、速読で「俺の身体は、本当はいったいどういう読み方をしたがっているのだろう」と思った。
速度が速くなると、複数行をまとめて読んだり、ジグザグに目を走らせたり、ブロックで読むとか色々とある訳である。
また、過去の遅い読み方に引き戻されないように、理解度を落としても○秒で自動的に次のページにめくるというような読み方もする。
いずれにしても、意識的な要素が大きい。
しかし、実際のところ、読みとるのも理解するのも、自意識のなせる技ではなく、無意識のなせる技であり、身体がやってくれていることである。
自意識は馬鹿社長のごとく上の方で威張っているけれど、実際には緊張を呼び、上がりを招き、虚勢を張り、少し結果がいいと理由なく舞い上がり、少し結果が悪いとすぐに落ち込み、あらゆることに理由をほしがり、やる気もないくせに質問したがる。
速読の練習でも、それら自意識が覚えて比較的納得している「自意識寄り」の方法をくり返しているのである。
しかし、それらは半ば強制である。
実際問題、筆者の身体は、どのような速度でどのような視野で、どのような目の走らせ方をするのかを筆者は知らない。
なんとなくみんなと同じに一行ずつ上から下に順番に、という読み方は「なんとなく慣れている」読み方であって、筆者の身体から自然に出てきたものではない。
身体にお任せした。
ふ〜ん。
三行ずつ「下から上」に読んでいた。
理解度も一気にアップした。
もちろん、本が変われば、自然にあらたなベターな読み方を出してくるだろう。
その時読んでいた本の行の詰まり具合、改行の頻度、文字の大きさ、会話文の多寡などで変わってくるだろう。
しかし、まさに、その本は下から上に三行ずつ高速で目で追うと、実にしっくり来た。
これを読んで真似しても、うまく行く人はきわめて少ないと思う。
筆者自身明日はどうなるか分からない。
しかし、ある時は三行ずつ下から上に読んで、速度も理解度も上がる自分と出会えたことが大きい。