1253話 的はずれの効果

たとえば前屈をするときに、「前屈」と言ってやるよりも「股関節(そけい部)の谷折り!」と言って曲げた方が数段身体は柔らかくなる。


いまやっていることを的確に表現できれば、身体の反応は飛躍的によくなる。


というようなことをテーマに掲げてヨガやら武術的身体の動かし方の練習などをやる。


いま練習していることに反射的に点数をつける。


つけたとたんにより高得点に向けて動きの質が高まったりする。


だから、今やっている動きのテーマはいったい何だろう、つまり自分は今何をしようとしているのだろうということを明確にせず、またそのできばえは客観的にみてどの程度だろうということを明確にしていない時の自分の稽古はまことにお粗末である。自己満足である。気休めである。時間の無駄である。


というようなことに気づくまで47年ほどかかっている。


というので、受講されるみなさんにも、そういう無駄な時間を費やさないですむように上記のことを心からお勧めする。


が、点数も動きのテーマもスムーズに口から出てこない。


こういうとき、そういう時には、少しでも正解に近いことを口にしなくっちゃというような心理が働くようである。


そこで的確な動きのテーマを表現する言葉を「思いつき」、妥当な得点を「当てた」としても、あんまり意味がない。


筆者は、そういう言葉による意識の方向付けや、得点化による自動修正の働きを身につけて、使いこなし、どんどん自分の中からよりよい結果を引き出す能力を身につけていただきたいのであって、今正解が聞きたいわけではない。


得点にしても、なんでもいいから一つ点数を口にすればいいのである。


すると、そこに違和感が生まれる。


違和感が生まれるということは、自分なりの正解が別にあるということになる。


それが生まれるから、少しずつそれに近づいていける。


的確な表現が言葉になって発せられると、とたんに身体が反応していきなり動きが変わる。それは体験済みなのであるから、自分なりの表現を出してみて、びくとも動かないか、少ししか変化しないか、何にしても最初の結果を引き出すことができる。


後は数繰り返して、自分の身体の取り扱い説明書ができていく。


的はずれでも出すことである。


出さなきゃ次が出ない。


みなみな様も自分も、その素質も能力もごくごく一部しかまだ出せてはいないと思う。


だからね、ドラ崎ちゃん、いい結果の時しか報告できないわなんて思いこみは捨てることです。