1258話
気をこちらに置いたまま、何かをしようとするとぎこちなくなる。
気を先に届けてから、それに引かれるように動くとすこぶるスムーズである。
というのは、カントリーダンスのA甲さんから、パートナーの手に飛びついて股をくぐって戻ってくる、というような(よくわかんないでしょ)動きのアドバイスを求められたところから気づいたことだ。
といっても、形を変えてたとえば演劇塾のレピュテーションで「言葉を届ける」という形でやっていたから気づけたのだろう。
といっても、元々は武術の稽古に登場していた技である。
武術として稽古すると、どうしても「相手を制して」「相手を崩して」という感覚に支配される。
ダンスの一部としてやってみると、相手とぴたっとくっついて、動きを読め、誘導でき、その延長線で崩そうとすると崩せる。
これで、武術の練習としてやっていた時に「出来ている」と思っていた動きが、あまりできていなかったことが解る。
どうしても「それっぽくやろう」という意識が入るからだ。
前に立っている相手の手のひらにそのままタッチするのは簡単だ。
ところが、一回転して握手となると、ぎこちなくなって相手の手にすがるようにわしづかみになる。
回る最中に相手の手のあるあたりに気を通しておくと、勝手にそれが引っ張っているような感じで、確実にタッチができる。手と手に「つながり感覚」ができる。
そのままの感覚で、相手のダンスをリードできる。
というような感覚をバットやラケットとボールとの関係でやればどうなるか。
というので、次のそういう機会が楽しみである。