1313話 

相手を個体だと思って押すと、力のぶつかり合いになる。


相手を水の入った皮の袋だと思って押すと、相手の動きが手の内に感じられて、固体の時よりもずいぶんと簡単に崩せる。


手のひらの紋を、洗面器を指で弾いてできる波紋のように見立て、相手を「振動するエネルギーの成形されたもの」と思って触れに行くと、ほとんど抵抗なく崩せる。


「…と思うと」という表現を使ったが本当は正しくない。


自分の中にそれを感じて、後、相手にもそれを探すと、が実際のところである。


相手のいい面を見ようよ、なんて考え方がある。


上記の考察をスライドして考えると、相手のいいところを感じるには、こちらが善人になることによってそれが察知できるということになる。


相手の邪悪さを呪うとき、我が身のそれにアクセスしていることにきづいた方がいいようだ。