1427話 へた練

頭で考えていることと、実際にやってみてわかることあいだには、ずいぶんとギャップがある。


今日も新たに、そんな「ギャップ」と出会う。


少し前には、腕を後ろ手にして使えないようにしてやる「型」の練習の方が、なんとなく実際に手を動かしているよりもはるかに切れがよくなる場合が多い、という事実に出会った。


演劇で、自意識で上手に言おうという思いがちらちら見えている「くさい」せりふよりも、「発声することまかりならぬ」と制限をかけてしまった方が、からだから「伝えたいもの」がにじみ出て、よほどましな演技になる役者さんや生徒たちとも出会った。


やればやるほどうまくなるはず、という「思い込み」の上でやっているが、実際は「いくらやってもうまくならない」というケースも多い。しかし、「うまくいかないのは練習が足りないからだ」という発想の方が頭が受け入れやすいから、軌道修正をしている人は少ないようだ。すると、多くの場合はスランプになったり、故障したりという未来が待っていたりする。


上記は「やろうとしていることに、一部制限をかけることで、かえって何がやりたいのかが明確になる」ということだろうと思う。


今日は、もう一段階、常識から遠い方へ行った。


「この方がうまかろう、正しかろう」という方には練習しないのである。


これは、確実におかしい。断固おかしい。決定的に間違っているというものを、意識的にやるのである。


名づけて「へた練」という(今つけた名前だけど)。


スイング中に、少しでも「正しい」動きが出てくると、コーチ役の叱責の声が飛ぶのである。


「こら、股関節がちゃんと使えてしまっているじゃないか」


「そんなに鋭く振ったらだめだ」


「もっとミートポイントから外れなきゃだめだろう」


「それじゃ、体重移動がうまくいっている!」


かくして、どんな初心者もここまではひどくない、というフォームが生まれてくる。


その後で、無心にプレーをすると・・・・修正が容易ではなかったような部分が見事に修正されてお出ましになる。


ホントの話です。