軸はうずを呼ぶ 6日〜

6日  「試行錯誤」


歩行時の股関節の軸向きの分析をしました。


その日の授業終了後にしっかりと稽古。試行錯誤と言いますが、文字通り。試して実行しましたら、錯覚・見落としが3つほど重なって誤った負担を多大に身体にかけてしまいました。


7日  「けがの功名」


6日の夜にはわからなかったのですが、水曜日になると明らかに右の仙腸関節から右足を故障。まともに歩けない。実家から駅まで何度も休みながら歩くぐらいです。しびれまであります。こんなのは初めてです。


ところが「けがの功名」とはよく言ったもので、その故障の箇所を分析することで、歩くときの軸向きを修正することができました。


8日


一日お休み。まだまだ骨盤から足は不調の極み。足を引きずらないと歩けません。ところが昨日修正をした新しい歩き方だと、すっすく歩けてしまいます。


犬の散歩に朝夕二回行き、それでももっともっと「この新しい歩き方を試したい」ということで、夜にまた歩く。歩くほどに、軸をかけると、故障をしているのに、びっこひいているのが消えていき、スピードが上がります。


まさかと思いましたが、最後には走れてしまいました。しかし、さすがにこれは無理だったとみえて。


9日。


水木から予想した回復のスピードを少し遅めてしまったようです。しかし、今日は出町柳、大阪、神戸とやたらと移動のある日。「横軸歩行」で乗り切れたとも言えます。


夕方は脳梗塞のマヒから皮下チューニングで回復中のMさん宅へ出張。


「軸はうずを呼ぶ」というのは、動作改善に必須の質のいい関節運動を引き出す方法です。動作をするというのは、ある関節を起点にして骨がワイパーのように動く現象の組み合わせです。その起点関節に動作方向が描く円の軸方向に氣軸を通すというものです。


歩く時には「ももを上げる」「足を後に送る、もしくは地面を蹴る」という意識を強調して速く歩こうとします。その「進行方向への縦の運動の意識」を極力抑え、股関節を横切る意識を持つ。結果的にこの方が目的とする足の前後運動というものが良くなる。結果足が速く動く。身体が軽く動くのです。


通常、歩こうという時には、足を前後させる意識を強く持ちますが、強い意識は微妙に力みを呼び、それは歩行を推進させる力を著しくロスさせるということがわかってきました。


このあたりの説明は、体験されていない方には非常にわかりにくいと思います。ですから、理解は道場で身体を通してしてしてください。


ここで言っているのは「腕を曲げたければ、曲げようとする意識を強く持つな。肘を横切る意識をもった方がいい」「ももを上げたければ、股関節を横切れ」というのが、めざましく動作改善をしているということです。


そこでリハビリ中のMさんです。不自由な右手の動作能力をじわじわと回復させ続けているのです。そのリハビリ中の意識の使い方も通常の人の動作改善のための使い方と同じじゃないか、ということが言いたいわけです。不自由だからこそ、よけいに「今やろうとしている動作を強くやろうとする意識でやる」のが当たり前だったのですが、今研究中の「うず軸動作」で考えると、一生懸命やるほどロスが多くて、疲労がまして、効果が減る可能性がある、ということになります。


発症後9ヶ月時点で肘も指も固まっていたMさんです。それが皮下チューニングを娘の真紀さんがせっせとかけていたら、拘縮が減ったからなのか、まずほんの少しの指の動きから徐々にその動きが回復してきたこの1年2ヶ月。


今では肩ぐらいまで腕も上げられるし、この三週間は指が五本ごにょごにょと動くまでになっていました。最近道場に来られるようになった理学療法士のOさんにお聞きすると、発症9ヶ月で固まっている腕や指が、そこまで回復していくのでも相当レアなケースらしいです。


そして、最近はごにょごにょとした動きまで出るようになったMさんですが、やはり指を開閉していると10回ほどでぎゅーと縮んでしまいます。必死に「指を開閉しよう」という意識を強く持つわけですから。


だからこそ、「腕を曲げたければ、曲げようとする意識を強く持つな。肘を横切る意識をもった方がいい」が効果を出すのではないか、とこの「腕」を「指」に変えればいいのです。「肘」を「手のひら」に変えればいいんだと。


そこで横切り軸意識を持ってもらうために、紙に書いた矢印を二枚用意して、指の開閉運動に応じて交互に矢印を見てもらうことにしました。


大当たり!!!


指の開閉が30回を超えても縮んでこないのです!


真紀さんに「最近、こんなに動くようになっていました?」と思わず確かめました。決してそんなことはなく、やはり「横軸意識」の作用によるものが大きいようです。もちろん、今までのMさんの努力がちょうど花開く時期にたまたま重なった可能性もなくはないのですが。


実験終了後の指の動きもそうとうに改善しています。


マヒからの回復にいい方法は、健常者の動作改善にもいい。健常者の動作改善にいいことは、スポーツマンの動作改善にもいい。リハビリしている人にもいい。リハビリのための特殊な方法よりも、誰がやってもいい結果になることの方が、きっと身体の本質的なものにアクセスできていると思うのです。


ということで、その足でテニスの吉田くんのトレーニングスペースへと向かいました。(続く)