大学関係者の方へ

先週の水曜日出発で、また石巻と、今回は気仙沼で活動してきました。大阪にいたときにも、また今回現地でも「夏休みに学生を動員してのボランティア活動を計画している」の声を複数聞きました。それについて、少々書いています。


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大学生の夏休みを利用しての、団体ボランティア活動が計画されているようです。そんなこと考えもしない大学よりもずっとずっとすばらしいことです。でも、あえて言います。「ちょっと遅いです」


でも、本当はもっともっと早く出動したかった思いがあった大学が動きだそうとしているのだろうと思います。組織が硬直していたり、文科省の授業制度ががちがちだったり。いろいろな事情で未だに動けないでいる。そうするとどうなるかというと、まとめて挽回したくなる。


すると、大規模に組織して一気に出動となります。残念ながら、今、石巻市街では一般ボランティアは側溝の泥だしをやっています。大人数で、自分たちで予定したり依頼されている仕事がない団体なら、そういう仕事しかありません。溝掃除が悪いとは言いませんが、8月の溝掃除に少なくとも涙を流して感謝する地元の方はおられないでしょう。8月には終わっている可能性が大です。それにそれこそ町内会でもできていた活動です。


私の知っている4月〜5月GWには、家屋の片づけや店舗の清掃や漁具の回収などで、涙を浮かべて感謝される場面はたっくさん見聞きしました。それぐらい途方にくれて絶望の縁にいて、そこからほんの少しでも希望の方に隙間があいたという場面でした。


その時期なら百人体制の動員でも、とりあえず数がそろうだけでも被災地のニーズに合っていました。


ボランティアが不要なのではないです。単純人海戦術では対応できない時期にすでに入っています。もっときめ細やかでデリケートになっていきつつあります。だからたくさん動いて成果は少しという状況に今後ますますなっていきます。


くどくど書いていることは、一ヶ月二ヶ月前なら、100人、200人でボランティア活動の未体験者ばかりまとめてきても、かなり被災地のお役にたったのに、7月後半〜8月などに大人数で来ても、その人数の多さが帰って混乱をまねくだけ、ということが夏休みに起こりかねないということです。


ボランティアセンターは、市民からあがってきたニーズに応じてボランティアを派遣するシステムです。難しい仕事は割り振りできません。さらにボランティアセンターは、旧・石巻市市内にあります。小泉改革以前は市外郡部だった牡鹿とか雄勝とかの半島漁村部などは、そもそもボランティアセンターに依頼したらボランティアに来てもらえるというシステム事態が周知されていません。


ボランティアセンターに依頼しても、来てほしい日にボランティアが来れるわけではありません。依頼が早い人が優先されるでしょうし、その日活動できる人数や団体の都合などがそこに加味されて微調整されるというものです。


牡鹿の漁師さんが、今日一斉に港の片づけをしたい、漁具の回収をしたいと言っても、ボランティアセンターでは対応できません。行政の原則として「公平」がありますから、昨日言ってきて、今日対応などできません。さらに、どんな作業になるのか、ボランティアセンターの人間もわからないのですから、そういう作業にボランティアを派遣することはできません。


そういう地域はどうなっているのかと言えば、NPOや長期ボランティアが、市街部から独自により救援の遅れている地域を探して周辺部へと活動を広げていって見つけていき、地元漁協や漁師さんたちと人間関係を築いていった結果としてさまざまなニーズや事情が理解されて、継続的に必要な支援を行うことができるようになっている、ということです。


市街地が。みぞ掃除をしている今(ただし、炎天下の作業は決して楽ではないですよ)半島部では明日納骨をするのに、墓地までの生活道路がまだがれきが撤去されておらず、お墓の業者の車両が入れないという切実な状況がまだあります。それを聞いて、緊急で活動内容を変更して重機部隊が道路を開けたというのがつい一昨日の話です。


ニーズはおそらく8月もまだまだあります。しかし、短期間で大量の人数が来たとしても、被災された方・地域にほんとうにお役に立てる活動になる可能性はきわめて低いです。


被災地の状況と現状で行われているボランティア活動を詳しく知る長期ボランティアの人と意見交換した結果は以下の通り。


大学生が200人、観光バス4台で一泊か二泊であわただしく活動して帰る… きわめて非効率。有効な活動ができる確率はきわめて低い。


バス1台ずつで四波に分けてくる…まだこの方がましだと思われる。しかし実際に被災者・被災地に有益な活動になるかどうかは疑問。


4日以上の複数人数の先遣隊が現地入りし、実際に大人数が参加可能と思われる活動を実際にやりながら、情報収集と人間関係づくりをし、本隊が来た時には活動のリーダーになって誘導できる。…これならば少なくとも、現地の長期メンバーの手を煩わせない部分は改善されている。


10人以下の人数で、一週間以上滞在し、その時もっとも必要とされている活動に、分散して参加し、長期活動ボランティアに学んでその仕事を後発組に指導できるように活動する。帰宅時期をずらして、一斉に交代せず、徐々に入れ替わるようにする。自分たちの活動は、ブログやメーリングリストフェイスブックなどで次期活動予定者に細かく報告しておく。これならかなり被災地救援になる。活動宿舎の提供も可能。


大人数のデメリット。某大学学生が百人規模でボランティア活動をした。それだけの人数を受け入れる場所の選定などに、実際には社会人ボランティアに奔走してもらったにも関わらず、マスコミ取材などを受けている間に、次第に増長して自分たちだけでできたようなあきらかな勘違いの言動などが目に付いたことに悲しい思いをしていた関係者の声を聞いている。


顔見知りだけで来ると、都会の平時のお気楽な気分が抜けない。実際に被災者と関わることで、一生の宝になるような体験ができたという人もある。しかし大人数で来ると意識が変わらない。また貧困な想像力からの的外れな言動・行動で、逆に被災地の方とトラブルも起こしかねない。


視察だけしても(しないよりましですが)実際の活動に入らないと実際のところはわからない。視察した時期の状況は一週間後にはまるっきり変わっている。それが被災地救援活動です。夏休みの行動計画を立てているとしても、それらは下手をすると「自分たちの都合」を中心に立てているだけであって、被災地のニーズや状況にあわせたものではない可能性が高い。机上の空論である。会議している暇があったら、一人でも二人でも被災地で活動を即時始めるべき。資金の余裕があるなら、そこに投入するのは意味があると思われます。


そして、その今実際に現場で行われている活動を、次の過程に、次のメンバーにつないでいくことが今必要とされていることと思います。短期大量動員で役にたった時期は、すでに逸してます。


あなたの住んでいる県の沿岸部が壊滅的な津波の被害を被ったとします。遠く離れた宮城や岩手でのんびりと夏休みの計画を練られていても、あなたが今住んでいる地域の誰も助かりません。やるなら今すぐ動く。実際に動いている人を支援する、次につなげていく、よりいいものにしていく。必要なことはそういうことだと思われます。


ほんと夏休みまで無理かどうか、真剣に検討されているでしょうか。最初に「夏休みなら」というのがあったのではないでしょうか。今すぐ行くという選択肢を無意識に外していないでしょうか。


さらに極端なことを言えば、大学名を冠したり、教員がかかわることで、逆に動きを遅くしてしまっている部分はないでしょうか?


少々極端な内容なように感じるかもしれませんが、これでも現地の声をいくぶんトーンダウンした内容で書いています。


私たちにできること、という角度では多くの場合は現地のニーズとかけ離れています。あなたの住む町の大半がヘドロに覆われ、がれきと化した状況でほんとうにありがたいと思われる支援が必要なのです。


     津田啓史 拝