連載25回

■■東日本大震災ボランティア活動記録
   「本職でボランティア」  ■■■

連載 第25回



4月14日 
再び南三陸町 ベイサイドアリーナ
 


今日は全体が3方面へ。一隊は4日ぶりに雄勝地区へ。まだまだ回れていないところもあるので、現地支所と相談しながらさらに進めていこうという作戦。もう一隊が、武道大学宝子ちゃんの避難所での体操教室(ストレッチポールをやるらしい)で、もう一隊が昨日に引き続き南三陸町。ちなみに採澤君は第一次活動を終えて、今日から一時帰宅。東京へ。


 南三陸町の北側の海沿いの高台を造成して一角を工業団地のエリアとし、一角を運動公園にした。公的に使える唯一の大きい敷地を持つ施設なのだろう、行政の機能が集中している。市役所、消防、警察、病院。さらには遺体安置所。


体育館スペースは、耐震性に問題があるらしく避難所としては使えず、物資倉庫になっている(もちろん、それも必要だけど)。その分、残りのすべてのスペースが避難所になっており、一階二階とも通路として確保している部分以外は、すべてに避難している人で埋まっている。施設入り口を入ったところにあるロビーからすでに避難所スペースとなっており、市役所機能や病院機能を訪れる人で常に人の出入りがある。プライバシーなどはゼロである。


地元マッサージ師の今野さんや、東京から参加の鍼灸師米田さんなどが、一斉にフロアに散って、声をかけては施術していく。


入って左手のスペースで、地元の方だろうか美容師さんがすでに一人ヘアーカットボランティアを始めていた。「整体ボランティアと一緒に美容師も一人来ているのですが」と声をかけると、じゃあ一緒にどうぞということだったが、この時美容師まいちゃんは、WFP倉庫(ボランティア受付が入っているところ)で、スタッフ対象のカットを開始していた。施設が広いので、始まると誰がどこで活動しているのかわからなくなってしまう。


津田も最初はWFPテントで施術スペースを設けていたが、そちらは避難所からは遠く、人の流れの線からは外れているので、ベイサイドアリーナ内へ移動。美容師ボランティアの近くに「ベンチに座って順番待ち」が出来ている。


この「美容師順番待ち」というのは、整体・マッサージボランティアに取っては狙い目である。なんせ順番待ちをしている人なのでヒマである。だから、そこに声をかけるとたいていは「あっ、やって下さい」となる。そして、人がやってもらっているのをみると、どういう整体かが回りの人にも見えるので、「次お願いします」になったり「母が腰が痛いのですけど、診てもらえますか」というような流れが出来上がるのである。


「美容師待ち」の列でまさに順番待ち整体を始めようとした時に、足を引きずった男性から整体してもらえませんかの声がかかった。そこでは寝ることができないので、そのOさんの居住スペースに連れて行ってもらった。そこは館内では11班と呼ばれる廊下の一番突き当たりにある和室である。


昨日も回った館内であるけれど、ふすまが閉まっているので、気づかなかったスペースである。中には5〜6世帯。障害のある方や高齢の方とご家族を優先して居住性のいい和室を優先して提供しているということのようだ。


Oさんは、脳出血をなんどもくり返し、びっくりするぐらい何度も頭にメスを入れている。(正確な回数は忘れたが4回や5回じゃない)。病気の影響のある方は力が入りにくく、逆側は体を支えるために緊張が強い。


リハビリに通って、筋肉が固まらないようにという医師の指示を受けていたのだけれど、こういう状況だ。30分足らずの整体でずいぶんと動きやすくなった、これも前はできなかった、これもできるようになったと大変喜ばれていた。


三陸には、その後も定期的に人が入るようにしようと考えていたが、なし崩しに自分が行けない状況が続き、さらには自分自身の東北滞在のリミットになってしまった。気になっていたが、後日GWの活動の時に、快医学の大月さんが南三陸に快医学チームを連れて入った時の報告をお聞きすると、どう考えてもOさん。また調子よくなったらしい。これも前に書いた「災害時のバカぢから」か。


そのまま、その部屋の高齢の方を中心に整体をし、その日はもうその部屋だけでほぼ終わってしまった。


先日書いた「ZEROの桜井君が来た日」に作っていた報告書のフォーマットというのはこういう時のために必要なものとして考えたもの。


そこに行くとなった時に前回訪問時のそれをみて「左側廊下突き当たりの和室に障害の方、高齢者多し。脳内出血のOさん、強く訪問を希望」なんて書いておけば、次に行く人はうんと楽になる。ただ「マッサージボランティアです、どうですか?」と言って訪問するのと、「Oさんいますか?脚の方はどうですか〜」と入っていけるのとでは全然違う。
  


【本日の活動】

  整体・マッサージ・理学療法士・柔道整復士など14名 
  美容師 1名 
  大工  1名


  南三陸町ベイサイドアリーナ 体のケア・マッサージ 35名
                ヘアーカット 5名
  雄勝地区  体のケア・マッサージ 44名
        他 包丁研ぎ4本 まきわり30本(後藤棟梁による) 
  桃生地区  津山第一小学校 体のケア 15名
  河南勤労体育センター ストレッチポール講習会 33名
  


【本日の会議より】

 学校の再会に向けて、今は教室が避難所になっているが、それをすべて体育館などに移して、教室を空けていくことが決まっている。現在の指定避難所になっている学校の収容避難者数が5885人。体育館の収用可能人数が3542人、とのこと。

 差し引き2313名があぶれるらしい。(その後GWの段階で、結局まだ教室に残っている方はいたようだ)