連載第29回「美容室主催のボランティアバス」/6月の特別講座

■■東日本大震災ボランティア活動記録■■


「本業でボランティア」


連載29回目


4月18日 美容室主催のボランティアバス 


 引き続き北上地区。今日は午前午後で二箇所である。昨日のはまぎくから1キロほど先にある白浜荘という旅館と、はまぎくと北上総合支所跡(骨組みしか残っていない)の間にある長観寺というお寺の避難所である。


 4月最初に一緒に活動した小野さんが久しぶりにまた石巻入りしていて同行。小野さんはこのあたりに何度もサーフィンにきたことがあるという。延々続いていた松林の松の数も減り、浜の大きさが全然変わってしまっているという。もっと遠浅だった。だからいい波が来たと。


 そのまばらになった松林に消防団の小型のポンプ車が一台停まっている。すこしへこんでいるし、斜めに停まっているから津波に流されたのだろう。ぎりぎりまで海岸線で警戒していたのではないかと空想が浮かぶ。地域の人のために出動したこの車に乗っていた消防団の方が、「逃げててほしいよね」「山近いしさあ、きっと助かっているよね」と小野さんと言い合う。


 白浜荘はトンネルの手前を十分な高さ上がったところにある。玄関ロビーの横にはプラスチックの大きな四角いかごが並んでおり、それぞれに世帯名が書いてある。近隣の人の救援物資の集配所にもなっているらしい。


 来訪の趣旨を伝えると、「カラオケ付き大広間」の方に案内される。カットと整体の開始だ。


 オーダーは美容師二人だったが、まいちゃん一人でなかなか大変だったのだが、まもなく飛び込みで応援隊が到着した。愛知県東海市の美容室「流(りゅう)」の三人だ。男性二人女性一人の三人は、加藤店長と坂野さん、女性は成田さん。今風の若者のラフなファッションに、腰に道具一式ぶら下げた、いかにも「都会のはやりの美容師さん」という感じ。とても気持ちのいい人たちだった。


 聞くところによると、今日は「美容師三人の他に、見習いとお客さんの有志で来ました。見習いの若手とお客さんは泥出しボランティアの方に行っています」とのこと。美容師がボランティアに来るのはその後もたくさんであったけれど、お客さんまで一緒に来たのは流さんご一行様以外は知らない。ふだんから、お客さんととってもいい関係を築けているんだろうなあと想像されるのである。


 三人だとけっこう場所を取るので、カラオケ舞台の方をカット会場に設定。ブルーシートを敷き、イスを並べる。先ほどいの一番に整体を受けた少し脳梗塞のマヒが残り、耳の遠い年配の男性が、さっさとイスに座った。そして、この避難所のもっとも若い層、幼稚園ぐらいの男の子も並んで座った。このカラオケ舞台のバックは壁ではなく、外が大きく見晴らせるように特大の窓になっている。そしてその窓からは、朝晩はまだ寒いとは言え、四月後半の春の緑が少しずつましている新緑の山である。


 その新緑の景色をバックに、手際よく髪よけの布を巻き付けられた「二人のてるてる坊主 おじいちゃんと孫の図」のできあがりだ。よくある新聞の読者写真コンテストなんかで入選しているめちゃめちゃ微笑ましい写真があるが、もうあれそのもの、ちゃんと撮影したら優勝間違いなしの構図だった。


 次々にカットを受けていくのだけれど、ふつうなら美容師というのは鏡の方をお客さんと一緒に向いているから、順番待ちの時などはその後ろ姿を見るものだけど、ここでは舞台上でこちらを向いて三人並んでカットしているから、あたかも「ヘアーカット選手権」とか「ヘアーカットショー」という感じだ。


 そして、次々にスッキリと散髪されていく孫世代を、客席側にいる年配のご婦人方が、もうほんとうに目を細めて嬉しそうに見ている。舞台装置ができすぎにそろっているからだけど、筆者はこんなに幸せなオーラに包まれた散髪風景を初めてみた。こっそりとちょっと泣いた。流の三人、かっこいい。でも、場所の関係で逆側の隅で黙々とはさみを使っているまいちゃんもかっこいいのである。


 あっという間にお昼を回り、まだまだ希望者は続いているが、今日は佐藤課長オーダーのもう一箇所にも回らないと行けない。長観寺さんだ。ここはボランティアセンターの小松さんのご実家だ。というか小松さんの家だ。頭が坊主頭なのは見て知っていたが、家業も坊主だったのだった。東京へ一時帰宅する前の採澤君も、一度行ったと言っていた。


 もう一箇所回る予定があるので、お一人先にそちらに行ってほしいということを告げると、ちょうど手が空いていた加藤さんが行ってくれるという。とにかく流さんは、「何でもやります、どこでも行きます、言われた通りに動きます」という姿勢がまったく嫌みなく徹底しているのである。


 ところで、これを書いている5月28日に、そういえば流の成田さんに名刺をもらっていたことを思い出し、ホームページを見てみてびっくりした。


緊急募集
 「私たちと一緒に被災地へ
     ボランティアにいきませんか?」
私たちは4月に宮城県石巻市へボランティアに行きました。
スタッフとスタッフの友人、お店のお客様の総勢11人でいきました。


cutをした人、泥や瓦礫の撤去作業をした人で分かれてやりました。
このとき感じた事がたくさんありました。


被災してから約1ヶ月経とうというのに
まったくと言っていいほど復興していませんでした。
人手がまだまだ足りない状態でした。


1人でも多くの助けが必要です。
小さな手でもあちらでは大きな手となって喜んでもらえます。


ぜひご協力お願いします。
一緒にボランティアやりましょう(^0^)


日程 6月12日(日)夜11:00頃 バスにて出発
       13日(月)朝9:00頃 現地に到着
                     ボランティア活動
                     夕方 終了
       14日(火)朝 戻ってくる予定です。


予算 バス往復費用 お一人1万円です。

* 人数には限りがあります。
  そのために先着順での受付とさせて頂きます。
  早めのご連絡をお待ちしています。


詳しくは「美容室流」 坂野まで 



 感動である。こんな美容室は無い。(あるかもしれないけど、まだ他にはお会いできていない)相変わらず泣かせてくれる流さんである。美容室主催のボランティアバスである。仮にバスが定員に満たず、自家用車に変更になったとしてもその気持ちが嬉しいのである。一人でも多くの人手が必要だと感じて、一人でも多くの人を集めようとして下さっているのである。


 実は、美容理容のボランティア募集に関して、慎重になっている面があるのである。(5月中旬あたりから)理容美容の組合から、避難所での活動をした地元の美容師さん理容師さんに補助金を出すという話があり、また市街地の理容室・美容室も開店しているところも増えてきている。だから、復興支援協議会のホームページに以前は「理容師・美容師のボランティアの方へ」というページを出していたのだけれど、外してしまっているのである。


 実は、ヘアーカットボランティア(整体・マッサージでも同じだけど)も、その問い合わせの段階で、ずいぶんと「う〜ん、ちょっとずれているんですけど」という話が少なからずあるのである。みなさん、もちろん被災者のためにお役に立ちたいという思いがあっての問い合わせである。どういうずれかというと、それは「行けば活動できる」という思いこみである。


 流さんの店長・加藤さんのブログを読むと、この4月のボランティア活動に行くということを書いた段階で、賛成の声ばかりではなかったらしい。それはもちろん、危ないんじゃないかという心配の気持ちだったりするだろうけれど、そういう声があると、邪魔になるんじゃないか、ニーズがあるんだろうかと、けっこう揺れていたらしい。


 だから、よけいに「現地の状況に合わせよう、カットのニーズが無ければ泥出しでもがれき撤去でも何でもやろう。でもカットのニーズがあるならば、全力でやらせてもらいます」という覚悟につながったのかも知れない。でも現地でコーディネートをする立場から言えば、流さんのスタンスは、ほんとうにありがたいのである。そして、そういう方々にはがんばっていい活動先を探しておこうと思うのである。


 美容師ボランティアリーダーのまいちゃんに各地からの問い合わせの電話があり、8人・10人でまとめて行動しないと困るとか、お年寄りの多いところを希望するとか、腕相撲大会もやりたいから、そういうところを紹介してくれなんていろいろと条件付での内容だったりすると、横から受話器をもぎとって「自分で探せ!」と言いたくなるのである。


 もちろんみなさん「できればこういう形の活動ができれば嬉しい」ということで希望を述べられるのだろうけれど、そこに「思っている活動ができないかもしれない」ということを、ぜひ想像して付け加えて頂きたい。


 長観寺さんは、北上支所跡とはまぎくの間の山寺である。一面のがれきの中に自衛隊がつけた道があり、そこを抜けるとふつうの道になって、平地にぐっと迫っている小高い山の横っ腹にはめ込むように建っている。急傾斜ではないけれど、けっこうな段数石段を登ってというところにある。ふだんならわざわざ登らないといけない苦役の階段だったろうが、その高さが津波の被害からお寺を守り、今は避難所となっている。


 土日が極端に忙しくなるボランティアセンターだから、平日に交代で休みを取るのだろう。社協の小松さんもちょうどおられた。 


 ご住職をはじめ多数の方を整体し、白浜荘を終えて駆けつけてきた坂野さんと成田さんも合流してカット希望者もどんどんさばいていく。ぼさぼさ頭に伸びていた高校生が、「いやあ、こんなに長く残してもらって、こんなに頭が軽いの初めてだ」と感動している。


 整体中にがらっと入り口があいて


 「○○さん、おるか?ああ、△△さんと××さんの遺品が見つかったべ。あとで見に行ってよ」
という言葉を聞いた時には、窓から見える一面のがれきの意味があらためて迫ってきた。その言葉のトーンがあまりにも日常会話のトーンだったことにも少なからずショックを受けながら…。
 

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【6月の特別講座】


■進化体操指導者を
目指す人のためのセミナー
(6〜8月・第一日曜日)を開催


第一日曜日10時〜17時


進化体操をいろいろと自分の専門分野応用されたりご自身のレッスンに取り入れたりされる方が増えて来つつあります!
そういう方に、より深く正確に指導してもらえるように、基礎や理論をまとめて講習する機会を作りました。

例えば
○腰椎に残る系統発生の痕跡
○体癖論・進化特性説
○波の合成と進化
○活元運動と進化体操
○椎骨反射(腰椎・胸椎・頸椎) 
○整体調律点と反射運動
○感覚器と反射運動の特性○空間(特定距離)と反射運動
○自意識低下法、無意識反射活性化法
○補助法あれこれ
などなどです。


内容が盛りだくさんになりますから、三ヶ月かけることにしました。


もちろん、人に教える予定のない方でも、今回の内容は効果的な進化体操習得に必ず役立ちますから進化体操を身につけたいという方なら、誰でも歓迎です。


6〜8月第一日曜日
10時〜17時(食事休憩を含む)

一回の受講料

今年の進化体操まったくはじめて10000円
1〜2回受講経験あり
9000円
10回未満8000円
10回以上7000円
20回以上6000円

6月3日 
7月1日
8月5日

定員16名


希望者多数の場合は、三ヶ月とも受けられる人から優先させていただきます。


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東日本大震災復興応援
現地で活動している道場の仲間を支援するチャリティ講習会のお知らせ


6月17日日曜日
1時〜5時


いつも役立つ
いざという時役立つ


「皮下チューニング」講習会


皮膚に密着させた手で、皮膚を活発に動かしてやる。これだけのことで、柔軟性の促進、動きの改善、肩こりや腰痛などの軽減に大きな効果を持つ「皮下チューニング」


日常の疲れや疲労感を、簡単に軽くすることができます。奥は深いですが、とりあえず覚えて使えるレベルになるだけなら誰でもできます。疲れを取りたい人にも、スポーツなどでの動きの質を良くしたいという人にも最適。


そして、万が一不幸な災害などで避難所に…というような時に、あなたがそれをその場所で始めれば、一緒にいる人にもすぐに覚えてもらえます。疲労や不安でへとへとになっている人に、かなり楽になってもらえます。


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今、東北の宮城県石巻市では、新大阪健康道場の仲間が長期・短期滞在して活動しています。共働しているのは昨年3月から津田が所属して活動拠点とさせていただいたオープンジャパン(旧名称 石巻ボランティア支援ベース絆)」です。


十名〜十数名の仲間が駐在して、漁業支援から仮設住宅支援などさまざまな活動をてがけ、地元との橋渡し、短期ボランティアの受け入れ先としても重要な活動をしています。


3月から長期活動している道場の仲間は、佃直人君。彼は仮設支援(独居高齢者の訪問支援)の担当者として活躍中です。5月上旬には10日間加藤紀代子さんもオープンジャパンで活動しました。


今回の講習費用の全額は、これら道場関係者の活動費(または受け入れ先の運営費)(オープンジャパン石巻石巻の整体チーム、那智勝浦の台風水害復興支援)関係の活動費用にすべて当てさせていただきます。

お申し込みはメールで。
参加費は決まっていません。
趣旨をご理解の上、カンパをお願いしますm(__)m


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【報告】


前回のボランティア支援講習会での募金と毎月定額募金に参加してくださった方の募金と別途単発で振り込んでいただいた方があり、今回の加藤さんの10日間の石巻での活動に交通費並びに活動補助金として3万円助成することができました。佃君にも同額の助成を予定しています。ご協力ありがとうございました。


毎月定額募金(一口1000円以上何口でも)も引き続き募集しています。現在5名の方が参加してくださっています。