架空コーチ

先週の火曜日から講習している「架空コーチ方式」と名付けた方法は使えます。驚いています。進化体操はもちろん、整体の技術練習、スポーツの練習、さらには人との会話、日常生活のあらゆる場面に使えそうです。


今、先行して学んだ方からの報告を聞きながら、日々実践して、限界や陥りやすい間違いを調べているところです。



「初めて練習する何か」とというのは、それをどうやったらいいのかを、長けた人やら書物やらから引き出して頭で理解して、その後回数をかけて練習してものにするという通常の練習パターンだと思います。「架空コーチ方式」は、それを覆すものでした。過去「へたれん」や「RCU」や「分身」にその現象は見られましたが、対象になるものが限定されるきらいがありました。


この10日間ほどの間に、「私は、私がまだろくに理解もできていないはずのものに対して、架空のコーチに指導を受けるという状況設定に身も心もずぼっと入り込むことで、すいすいと上達していくという結果を得ることができる」という現象と出逢い続けています、



応用範囲が極めて広い(広そうだ)というのがただいまの実感です。ただ上記の、「私は、私がまだろくに理解もできていないはずのものに対して、架空のコーチに指導を受けるという状況設定に身も心もずぼっと入り込むことで、すいすいと上達していくという結果を得ることができる」という解説を読んだ方。たぶんこうことを言っているのだろうなという理解は、たぶんほとんどの方がずれてしまっていると予想されます。


そういう常識の外にある現象です。想定外のことが起きる方法が、「たぶんこういう方法だ」と想定されたなら、それは想定内だから、おそらくこちらの体験してほしいと思っている質やレベルとは違っているということです。


素直で先入観を持たない人は、数分の説明で会得されるかもしれませんが、発見の経緯と広がりの過程を説明しながら体験してもらい、思いこみで違ったことをやってしまわないためには、小一時間が必要でした。


だから今のところ3時間以上の講座だけに入れ込んでいます。受講済みの方が90分レッスンに多数入り始めたら、90分のレッスンにもぜひとも盛り込もうと思っています。


週末の「進化体操の指導者をめざす人のための特別講座 全3回の一回目」でも、これは講習せざるを得ない重要な眼目になりました。


上記講座についてはこちら↓


http://d.hatena.ne.jp/meuto/20120525



申し込みがいつになく早いです。すでに10名の方の申し込みがありました。残り6人です。迷っている方はぜひ受けに来てください。芸事、スポーツ、人間関係、日常生活や仕事、まとめて変化を起こせるかもしれません。


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東日本大震災ボランティア活動記録「本職でボランティア」


2011年4月19日


テレビクルーに噛みつく

 

 この日の昼間の活動を記録した手帳が見あたらず、不明である。確か北上が二日続いたので、(もう一日北上からのオーダーが来ていた)他のメンバーに行ってもらって、中断していた南三陸に帰ってしまうまでにもう一回行こう、猪又課長に会ってこようということにしたように思うのであるが、どこで活動したかが思い出せない。オフにしたのかもしれない。


 しかし夕方からは覚えている。三陸自動車道・河南インター近くの「イオン」がオープンしているので、必要な品を買いに行った日である。品ぞろえの不備はあるものの、イオンにはたくさんのお客さんが来ていた。近くのユニクロも、ブックオフも、ホームセンターも、マクドナルドも、焼き肉屋も、ラーメン屋も開いている。


 まことに喜ばしいことであるのだけれど、実は胸中複雑なのである。被災直後に近いほど、ある意味被災地域は公平である。ほとんどの人が水も電気も食べ物も暖房も燃料も車もない。そこから通常の生活に近づいた人や地域が増えるほど、復興が遅れているところの遅れ具合が際だってくるのである。取り残されているような気分になるとも言えそうだ。


 しかし、これはやむを得ないことだろう。すべてが横一列で進んでいけるということの方が自然界には見あたらない。整体チームの活動だってそうだ。最初は大きい避難所、近間の避難所で活動していて、徐々に手が届いていないへんぴなところ、小さなところへと自然と活動が広がっていく。まず元気になれるところが元気になっていく。復活できるところが復活していく。そうやって手つかずのところとの差が歴然となる。すると次のターゲットが浮かび上がってくるから支援を集中する。そのサイクルを早くしていくことが目標となる。


 チーム用にA4のファイルを、美容師用に縦長の大きな鏡を購入する。ファイルはだんだん増えてきた避難所データの整理用だ。美容師・理容師は道具一式忘れず持ってくるのだが、鏡を忘れる人が多い。大きくてかさばるし、割れやすいから持って来にくいのかもしれない。


 なべちゃん、まいちゃんとラーメンを食べに行く。メニューは数種類に限定されているが、ふつうに食事ができることがありがたい。


 ※まいちゃん、本日まで竜巻被害のつくばで活動されてました。お疲れさま!



 夜の復興支援協議会の後に、某テレビ局が分科会の取材に来た。お話を聞かせてほしいと切り出すから断った。いいとも悪いとも言ってないのに、その時点でカメラが回っているんだからおかしいじゃないか。最初に自分の会社名と番組名。取材意図と目的。採用された場合の放送日は連絡しますぐらいのことは言ってもらわないと危なっかしくて答えられない。


 こちらがどういうスタンスでどういう活動をしているかも詳しく知らないのに、そちらで放送に使えそうな切り口を事前に想定していたら、こちらが何を答えようが、企画した切り口に使えそうな絵とコメントだけを切り張りして、まったくこちらのスタンスと違うものを作られることだってある。おまけに放送するかどうかちゃんと連絡してくるところなどまれであるから、自分の意図しないことを放送されて、取材を受けた本人は放送されたことさえ知らない。そういう不愉快な思いをするぐらいなら、最初から取材はお断りだ。


 筆者のマスコミ不信は高校生のころからである。卒業式の際に卒業生で示し合わせて、担任と校長先生に感謝状を贈るという企画をやった。式次第が滞りなく終了した後のハプニング企画として、体育館でそのままやったのである。


 次の日の新聞を見たら、わが家の取っている某新聞では、「式終了後に校長室で校長先生を囲んで」渡したことになっている。僭越ながら校長先生に感謝状を手渡したのは言い出しっぺの私である。では校長室で渡したのは誰だろう。
 話をしないという態度を全身と言葉で表明しているのに、カメラがずっと回っているから、この際、テレビ報道に関して言いたいことを言わしてもらうことにした。


 私の話す言葉を勝手に切り張りして、意図と違うものに仕立て上げられてはかなわないので自衛策を取ることにした。昨日ボランティアスタッフの整体をした時に、心のケアチームのメンバーに整体をしたところ、何かお礼がしたい、何が好きですかと聞かれたので、悲惨な地域の帰りにはストレス解消にチョコレートを食べると言ったら、さっき「たけのこの里」を持ってきてくれたのが手元にあった。

 
 ※「たけのこの里」を持ってきてくれた西村さんは、JENのスタッフとして、今も石巻で活躍中です。


 カメラに真正面に向き合うと、「たけのこの里」のパッケージを口元に持ってきた。実際に食べた。これでスポンサーの関係で8割方このテープはお蔵入りである。番組のスポンサーがたけのこの里のメーカーでない限り、このチョコレートのCMのような絵は流せまい。


 話のメインは、単純な図式に当てはめるのをやめてほしい、という話である。悲惨なら悲惨、復興なら復興。お涙頂戴なら徹底した美談。これだけ広域な災害で、話をわかりやすくまとめるのはやめてほしい、そんなに単純な現場ではないことは、実際に被災地を歩いているみなさんなら分かるはずだ。事前に決めた切り口に当てはめた絵を切り張りするのはやめてほしい。


 そういうことを言いながら、たけのこ作戦が万一失敗した時のために、他局の番組名をふんだんに会話の中に入れ込んだ。これでまず大丈夫だろう。


 でもこの局のカメラマンの人も、実はほんとうに流したい映像が、必ずしも流れていないことに心を痛めていたところもあったようだ。途中で音声さんにマイクを外すように合図すると、自分もカメラを膝の上に降ろして本気で話を聞いてくれた。最後には目に涙を浮かべて。


 ※このころは、ずいぶんと気が立っていたようである。5ヶ月後の那智勝浦では、もっとも被害の大きかったところに一般ボランティアがほとんど入れない状況を前に、集まった石巻の仲間と「東北から来たボランティア」を全面に出して、積極的にマスコミの目に止まるようにして、またメンバーともどんどん取材に応じるように申し合わせた。


ただし、事前に「こういう惨状には多くの手助けが必要なので、取り上げていただくに際して、そういうボランティアに行こうと気持ちに見た人がなるような切り口を盛り込んでいただくようお願いします」ということを事前にお願いするという作戦だった。


筆者も少しは大人になるのであった。