連載42回 ある時は炊き出し ある時はアロマ

東日本大震災ボランティア活動記録「本職でボランティア」


連載4 回目


ある時は炊き出し ある時はアロマ


 本業ボランティアが、刀を隠して活動し、被災者との関係が近づいてからいざ鞘を払った時の切れ味は、最初からむきだしよりも効果的という場合がある。


 GWを過ぎて、ボランティア数が激減してきて、炊き出しメンバーが不足したことがあり、整体チームのアロマまりここと霜口まりこさんが、湊食堂の助っ人へ。


 実はこれは後の活動がやりやすいパターンである。豚汁なんか配りながら「そこのスペースで後でアロママッサージしますからね。ほっとしたひとときを味わいたい人は来てくださいね」なんて声をかければいいのである。


 アロまりこさんの場合も、けっこう順番待ちが出たりしたそうだ。


 まったくこれとは逆のケースを目の当たりにしたことがある。南三陸の某小学校に美容理容組と整体マッサージ組が一緒に行った時のことである。ここは体育館が避難所になっていて、隣接する救護室の一角を「カットルーム」にした。


体育館に入ってすぐに体育館舞台前から拡声器で「この後、救護室では顔剃りとヘアーカットをやります。体育館では整体・マッサージをやります。整体・マッサージは今から体育館内を巡回しますので、お気軽に声をかけてください。カットルームは準備ができ次第お知らせします」とお知らせしてから別室の美容室開業準備に入った。およそのめどがついたので体育館に出て「準備できました」の声をかけようとしたら、テレビ取材付きのゴスペルグループが前にぞろぞろと並んでいるではないか。


 せっかく歌おうとしている人の前で、別室に移動しないといけない美容室を始めるのもなあ、聞いてなかったよなあと思っていると、自治会の副会長さんが「飛び込みでいきなりきたグループだから、美容師さんの方始めてもらったらいいですから」とのこと。


 予告を聞いてカットの方にはすでに人が来始めていたので美容師グループは支障はなく開始することはできた。


 4人のゴスペルグループで、とても上手だったのだけれど、なんかいきなり歌いだした感じで、けっこう出かけている人がいて人数のあまり多くない避難所のみなさんも聞いているようないないような。


 カットルームと体育館とを出たり入ったりしながら、見ていると、「ではあらためて、僕たちは全国に700人参加しているゴスペルのグループで、今日は4人で来ました」と、オープニングの挨拶をしているではないか。


ようするに、さきほど歌っていたのは、カメラアングルなどを決める「テレビ用リハーサル」だったのである。20分ほど歌ってらっしゃったけれど、正直に申し上げてほとんどの被災者の方は聞いていなかった。ラストの「ふるさと」のあたりで壁際の年輩のかた3人ほどが口ずさみながら手拍子をうっていたのが、唯一「聞いてます」反応だった。


 さらに「???」だったのが、20分ほど歌った後、40分ほど体育館の真ん中で延々取材を受けていたことだった。これがテレビで放映される時には、被災者を元気づける感動の音楽のプレゼントという中身になっているのだろうか。


 私の目に映った景色は、被災者を音楽で元気づけるゴスペルグループではなく、いきなりやってきて、テレビ番組用の撮影を避難所の真ん中で延々やっていたよく分からない方々だった。


 私以外の整体メンバーも「聞いてる人はほとんどいなかったですね〜。後のキッズスペースでお兄ちゃんお姉ちゃんに勉強や遊びの相手をしてもらっていた子どもたちなんて、一回も前見てませんよ」と言っていたから、私だけがゆがんだ目で見ていたというわけではない。


 音楽で慰問するのが悪い訳じゃない。すばらしい力を持っているとも思う。だけど、ただ歌えばいいってもんじゃないと思う。テレビの人も被災者が音楽にほっとする姿を放送したかったんだろうと思う。でも結果としてゴスペルの人たちは、被災者に合わせるよりもテレビの都合に合わせてしまったように見えた。その結果テレビの人が期待していたような状況にはならなかった。


 いきなりイベント的にはじめる方式はよほどの有名人でもないかぎりあまりいい活動ではないと思う。まず荷物整理でも水くみでも炊き出しの手伝いでもそこで活動するべきだと思う。その上で、夕食後にでも「それでは一曲」という具合にやればいいと思う。


 慰問というものも、それをしている時間は、被災者の時間を奪っているという面がある。それは整体やマッサージだってそうだ。もちろん歌う側だって、整体と同じく希望する人に届けばいいと思っているのかも知れないが。
 

 ところで、その2時間ほど後の同じ避難所のできごとである。この一ヶ月この避難所で活動していた自衛隊の部隊が交代となり、その離任式というのか、お別れの会が行われたのである。


 体育館部隊上に整列する40人ほどの自衛隊のみなさん。お昼には閑散としていた体育館には、大人も子どももみんな帰ってきているようだ。小学生が感謝の手紙を読み上げ、子どもたち手作りのメダル?か何かを舞台上の全員の首にかけている。記念撮影になったら、次から次へと「このカメラでも撮って」「このカメラでも撮って!」「ちょっと広報さん、あなたも撮ってないで入ってよ」という感じでなかなか終わらない。


 最後は花道である。体育館を横切る花道を避難所の人全員で作り、自衛隊のみなさん、もみくちゃでなかなか前に進めないほどだ。


 2時間前のそれとあまりにも違う。でも違って当たり前だ。被災者になにかを渡したい、贈りたいならば、まずつながることが先だ。


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