本職でボランティア 連載再開

長らく中断しておりました、連載の続きです。


東日本大震災ボランティア活動記録

「本職でボランティア」 



これは一昨年3〜5月に、宮城県石巻市の災害現場でお会いした「過去の災害救援からの経験豊富なボランティア」「さまざまな本職を活かして、被災者に喜ばれる技能・職能ボランティア」のみなさんの活動を、「こんな活動もあるんだ、こんな活動をしている人もいるんだ」ということを多くの方に知ってもらいたいと、大急ぎで本一冊分ぐらいの分量を書き、筆者の関係者にお配りしたものです。とにかく一日でも早く多くの人が読み、被災地にさまざまなプロが駆けつけてくれればという思いで書いたため、内容には筆者の独断や偏見、認識不足や事実誤認も含まれていることをお詫びいたします。また内容はあくまでも二年近く前の当時の状況に基づいて書かれたもので、現状とはずいぶん離れています。当時の様子を知っていただくためにも、ほぼ原文のまま掲載いたします。

炊き出しがいいとは限らない


 被災地救援の定番と言えば、炊き出しである。家もなければ調理器具もないという方々に、栄養バランスを考えた温かいものもを食べてもらうという必要不可欠な活動だ。


芸能人やスポーツ選手や企業や個人や飲食店が炊き出しにやってくる。来るか来ないかで考えたら、どんな炊き出しでも来た方がいい。ただし、タイミングによってその価値は上下する。


災直後であれば、もう何の条件もないでしょうね。なんせ食べ物がないのですから、手間のかかる炊き出しよりも一人でも多くの人に食料が配布できればもう恩の字。


とりあえず、菓子パンでもおにぎりでも食料がいきわたるようになったら、温かいもの、栄養になるものなどの炊き出しはとても嬉しい。


しだいに継続的な炊き出しポイントができ、それが増えていきます。石巻の復興支援協議会でも、炊き出しは分科会で細かく打ち合わせをしている。


この段階になったら、炊き出しをしようという方は、しようという地域の社会福祉協議会かボランティアセンターへ連絡を取って、すでに活動している炊き出しチームとだぶらないようかぶらないように連絡を取る。これが必須です。それをしないと毎日こつこつと準備をしている炊き出しチームが、近隣の「飛び込み炊き出し」とかぶったために、せっかく準備したものが大幅に余ったりする。


4月〜5月の石巻では、連日8千食とか、多い日には1万2千食なんていう信じられない数の炊き出しがあたりまえに行われていた。宅配までやっていた。


それらの食材や資金がどうなっているのか、これは活動ジャンルが違ったのでよく分からない。


北海道から、芽が出かけているので商品にはならないけど、皮さえむけば大丈夫というジャガイモが5トン届くけどどうしようか?なんて相談を横でしていたのを覚えている。


自衛隊の皮むき機はすごい性能ですよ。自衛隊に皮むいてもらいましょう」


 なんて会話を聞いたことがある。


ふと見た紙に「○○のコープさん、メニューと人数だけ送れば、見合った食材を向こうでそろえてくれます」なんて書いてあったのを見たことがある。


でも、食材を送ってくれるのであって、支払いは必要だ。そういう資金はどうなっているんだろう。もともと被災者が死なないように食料を支給するのは、緊急時の自治体の支援内容になっていると思われるので、公的な資金もあるのかな。あってほしいな。


いずれにしても、それだけではないことは確かだ。電気が通って冷蔵できるようになったらオージービーフが○○キロ(トンだったかな)届くんだけどなんて話も聞いたし、ただいま鶏卵一千個の在庫なんて話も聞いたから、そういう支援物資、つまり善意の食材が炊き出しを支えているのも確かだ。何より、炊き出しをしているメンバーは、無償でそれを支え続けているのは紛れもない事実だから。


だから、石巻市内のようにすでに市街地のかなりの地域をカバーしているような地域で、芸能人が派手に炊き出しやるのを悪いとは言わないけれど、それだけの予算があるのなら、炊き出し過疎地を調べて、少ない食数でも長期間続けたりする方が100倍かっこいいと思う。


 「被災地に元気を届けたい」という思いに嘘はないと思うけれど、単に届けりゃいいってものでもない。すでに始まっている活動と上手にリンクして頂くことを切に願うものである。
 


芸能人やスポーツ選手の高額寄付について


何千万円とか億という金額の寄付の名乗りを上げる芸能人やスポーツ選手が何人もあった。黙って寄付をしている方々も多いだろうが、こういう時だから、名乗りを上げられる方がいいと思う。


そうすることで、一種の「オークション」のような心理が働いて、寄付総額が上がればそれに越したことはない。だから、有名人はどんどん名乗りをあげればいいと思う。


さて、何千万円、何億という寄付の行き先については、人それぞれで違うだろうが、ここで論じたいのは具体的な寄付の使途が決まっていない場合である。


日本赤十字というのがよく耳にするケースである。しかし、どうもここは、必要そうなところを調査して、こまめに分配をするというというところではないようだ。


どこへ寄付したらいいか分からないから、とりあえず赤十字という状態であったら、高額を動かせる人は、もう一歩二歩踏み込んだらいいのにと思った。


せっかくの資金が、動かないまま放置されるぐらいなら、今困っている状況を改善するために使った方がいい。


仮にダルビッシュ選手の一億円がここにあるとする。


即座に二人雇って、自動車で現地に赴かせる。その間に5人〜10人の専従できる人を確保する。で、事務所機能を備えた自給自足できるキャンピングカーを一台確保する。同時に後方支援事務所機能を立ち上げる。


現地入りしたメンバーは、二人一組で自動車でひたすら現地の状況やどういう支援が行われているか報告する。二人いれば、運転中に電話することができるから、一人ではロス。また見方の偏りも防ぐことができる。一カ所で複数の人から話を聞ける。


実はその報告も、おそらく的を得た報告が入るまでに三日ぐらいかかる。初日二日では、おそらくかなり偏った情報になってしまうだろう。要するに「何がどうなっているのか訳が分からない」状態を脱するのに、二日間ぐらいはかかる。


たとえば行政の方はご自分の担当地域については詳しい。しかしそれ以外の地域を見に行く余裕などはない。避難所の責任者はほかの避難所のことは分からない。広域の情報をバランス良く持っている人というのはまれである。自衛隊はよく分からないけど。


その間の情報で拙速でも必要な機材物資を集め、三日目ぐらいにはとりあえずの拠点を決め、キャンピングカーの現地本部機能を複数の人間と、複数の車両とともに送り込む。


現地入りした人間は、さらに広範囲の情報を集める人間と、すでに活動している現地のNPOなどのチームに入って、実際に救援活動を手伝う組に分かれ、どんどん報告を上げて情報を共有し、密度を増していく。実際の活動に入るのは、ただ聞いて回るのと、実際の活動を通して入ってくる情報では質が違うからだ。


そうやっている中で、小口の資金援助で円滑に救援活動が行われそうなところがあったら、現地の判断でどんどん資金援助していく。そうやって、どこを応援すれば被災者被災地のためになるのかを、実際に現場を見ながら判断していく。効果的な資金の使い方が見えてくるにつれ、現地本部機能を縮小していき、その分をすでに活動している団体の資金的なバックアップに振り替えていけばいい。


人件費や活動費に消えるとはいえ、どこかの寄付口座の中で眠っているよりはよほどいいと思う。
 


ボランティアは自己完結について

 
 ボランティアは衣食住自己完結しなければならない、そうでないのはかえって現地のじゃまになるというのは、マスコミが流す正論だ。しかし、それを鵜呑みにして三食自炊していたら、活動時間なんて確保できないのが実状だ。


震災当初、岩手県が県外ボランティアは受け入れられないという姿勢を取っていたのは(すでに解除されています)行政が対応できないという意味だ。被災者がお手伝いを断ったわけではない。

だからといってそれを鵜呑みにして誰も岩手県に行かなくていいのか、という話である。被害の規模を考えれば、県外者の助力が不要なはずがない。


岩手県を悪く言っているわけではない。行政の立場ではできることとできないことがあると言っているだけである。岩手県の行政が発表した方針は、岩手県の行政が対応できないからそう言っているだけで、じゃまにならないで役に立つ活動なら断る理由がない。


私が活動拠点として泊まらせてもらった南境生活支援センターは、地域の人が管理している地域の共同使用する会館だ。石巻で活動すると決めた吉村さんが、大学の近辺を自分で歩いて、見つけて、管理責任の人を探してボランティアの活動拠点として使わせてほしいとお願いして快諾を得た。交渉はわずか3分だったという。


その後、正式に契約書を交わし、選挙で使う時などはちゃんとそのスペースを片づけるなどの条件を明記して継続使用している。このベースで延べにすれば何千人という単位のボランティアがお世話になった。共同生活することで、炊き出しのあまりを食事として頂き、賞味期限切れの支援食料を受け入れてありがたく頂き、昼食用のおにぎりをほかのボランティアに握ってもらったこともある。


おかげで長時間の活動時間が確保できたから、夜も心おきなく行政の人や長期活動NPOの人の整体に精を出せた。


この宿舎確保の交渉は行政の人にはできない。どんなボランティアが来るかわからない状態で、ボランティア宿舎に貸してねとは言えない。何かトラブルがあったら行政の責任になってしまう。


テラルネッサンスさん(みんつなさん)が陸前高田で拠点にしていたのは自動車学校の宿泊施設だし、採澤君が気仙沼で拠点にしていたのは、アースデイ東京タワーのあきおさんに紹介してもらったレストハウスである。八ヶ岳ピースワーカーズさんは、牡鹿半島の付け根の集落で、やはり集会所を貸してもらって拠点にしている。


民間同士の話し合いで、宿泊できるところはけっこう確保できるのである。


被災地にボランティアの受け入れ施設がないというのなら、それを作るボランティアをやればいいだけの話なのである。自己完結では非能率だと思ったら、自分たちで分業して活動時間が確保できる仕組みを作ればいい。


現地に入って、地元の人に迷惑をかけないで、実際に何が困るのかを体験すればいい。それがほかのボランティアも困ることだったら、それを解決するための一歩目二歩目を自分でやればいいのである。


踏み込みが浅ければ、ろくな活動はできない。一歩では足りないと思う。二歩踏み込む覚悟でしたたかに行けば、ボランティアお断りの地域でも、やれることはいくらでもあるのである。


こうやって自分なりに気がついた問題点を列挙してみて、共通点が見えてきた。それは踏み込みの浅さである。炊き出し、団体ボランティア送り込み、ボランティアお断りの自治体、高額寄付の使い方、テレビ報道、すべて同じである。(ということは、同じ時代を生きている筆者だって同様であろう。)

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【新大阪健康道場からのインフォメーション】

近づいてきました、進化体操3月合宿
3月22日〜24日(一泊二日参加可能)

兵庫県宍粟市一宮町スポニックパーク一宮

http://ameblo.jp/sinkataisou/entry-11483138858.html