254話 小林さん思い出の続き  

 日常淡々日記度    ★ 
 お気楽エッセイ度   ★★ 
 ひたむきに伝えたい度 ★★
 筆者自身の心覚え度  ★  

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その年のタイガースは球団史上初めての最下位を突っ走っており、その日も巨人相手に負けておりました。確か、試合も終わりに近づく7回が8回になって、小林団長の「よっしゃ、もうやってええ」というやけくそのGOサインが出ました。ついに高校生吹奏楽部によるコンバットマーチの演奏です。この日の為に自宅2階の六畳間に集まって練習したリードの振りも披露しました。ろくに練習できていないので、バラバラですが、それなりに受けました。

別にその応援が効いたというわけではないでしょうが、何と9回逆転サヨナラ勝ちになりました。もう気分は最高です。さんざ盛り上がって帰ろうというときに、小林団長がてまねきしました。

「ごくろうさん。そやけどなあ、ちょっと今日は目立ちすぎとった。帰りに向こうの応援団がごちゃごちゃ言うかもしれんが、その時は俺の名前を出せばエエ」

シブイ!直立不動で団長の言葉を聞きながら、シブさに感動する若き日の私だったのでした。

我が母校はスポーツはなかなか強い部があったので、毎年インターハイ出場なんてクラブも出てまいります。するって〜と全校集会で「壮行会」ということになります。実にいい加減なすばらしい学校で、「あるもんは使ったらええやん」という安易な発想から生徒指導部長のいっちゃん恐い先生がこちらにあごをしゃくり「おい津田、エール切れ」ということになり、正規のクラブの壮行会のエールを、タイガースの私設応援団が切るという不思議な光景が繰り広げられました。

でまた、夏の高校野球の県予選になりますと、小林団長にお願いしてタイガース応援団から応援旗を借りてスタンドで振ります。その年はなんと決勝戦まで行ってしまいました。ベスト8になると地元UHFのサンテレビで中継が入ります。すると相手校が「質実剛健/高校生らし〜い」整然とした応援をくりひろげ、こちらは「軽佻浮薄/なぜかタイガースの応援旗がはためく」という不思議な光景が放映されるのでした。

そういうバカな高校生を小林さんは、実に可愛がってくれていたのですね。
もっとはやくご挨拶に伺えばよかった。
心からご冥福をお祈りします。

 ※245話以前のバックナンバーはミュート大阪健康道場の日記
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