274話 親知らず

同じネタを知りあいのメールマガジンで読んだところなのだけれど、体験が同じなのでやはり書こう。ごめんね、K谷さん。

先日、親知らずを抜いたのである。右の上奥。(上記のK谷さんもまったく同じ所だったそうだ)すると、あれよあれよと体が変わってきたようで、内面、心理が変わって、おそらく人生のプチ転機?(と表記するのはちと大げさか)なる行動にまで結びついてしまった。

実は、この右の親知らず(とくり返し書くのもめんどうなのでOちゃんと呼ぼう)は、もう随分と前から生えている。ここ数年着々と成長し、だんだんとその内側にあるほんとだったら一番奥の歯を圧迫し始めた。老舗と新興勢力のじわりとして戦いが口腔内右上部でひそかに行なわれていたのである。

今まで右の奥の間ででんと当たりを見下ろしていた(何たって上の歯だからね)奥歯だったけれども、すでにその成長期は過ぎており、人生の途中で虫歯というトラブルもあり、銀歯をかぶせて鎮座されていたのであった。

そこに新興勢力Oがじわじわと圧迫を始めた。すると、奥歯は断固としてその場に踏み止まるかと思いきや、なんとOに押されて場所を譲りはじめるではないか。歯というのは不動のようでけっこう優柔不断だということをその時に知った。

奥歯は、なんと外側にずれることで親知らずに場所を譲るのである。つまりくちびるに向かってはみ出していくではないか。

奥歯を臼歯と言う。臼とはうすである。サルカニ合戦のなかで、再重量級の、K1戦士で言えばボブサップか曙のような役回りを果たしたのが「うす」である。こんなに軟弱でどうするんだ、仲良くならんでダブル奥歯としての活躍を期待していた私の希望はみごとに裏切られた。(続く)