286話 オレンジ色の蛍光灯はいいぞ 1

道場は着々と片づきつつ、かつきれいになりつつある。

道場の蛍光灯は、冷たくて和室にマッチしないので、和紙をかぶせている。

先日、エアコン取り替えに至る経緯で登場した(すばやく空調を分解して『電気火花が飛んでまっせ』と教えてくれた)電気&パソコンの専門のIさんによると、

「この蛍光灯は白いように見えますが、実はどちらかと言うと青なのです」(Iさんは劇団の照明も手掛けるその筋のプロなのであった)

「だから、そこに黄色い和紙をかぶせていると、ほのかに緑になっているのです」

なんと、なんと。

「蛍光灯にももっとオレンジ系のものがあるのです。津田さんの意図している和の空間にするのには、そのオレンジを使うべきなのです」

というようなことを、エアコンの件のはるか昔に教えてもらったことがあるのを思い出し、「ミドリ電化伊丹店」へ発作的に買いに行く。

ミドリ電化は、関西を地元とする電化製品の量販店である。「中途半端は大嫌い」をキャッチフレーズに、「税込みポッキリ価格でどこよりも安い」とうたっている。

行ってみて分かったことは、オフィスやら学校には当たり前の縦長の蛍光灯というのは、一般家庭にははほとんどないんだ、ということなのである。

蛍光灯売り場の表示のあるところに行くと、丸い輪になった蛍光灯はいやっちゅうほど各メーカ様々に色とりどりに整然と美しく置いてある。

ところが、『1メートルちょいの棒状の蛍光灯』というのは、横にしておくと場所ばっかりとってしまう。メーカーごとに並べようものなら、4メートルも5メートルも棒状の蛍光灯で売り場を占められてしまう。

しかしそういう蛍光灯は一般家庭では使われていないので、ファミリー向けのこういう量販店ではまったく売れない、という悲しい定めがあるようなのである。そういう悲しい定めを背負って、棒状蛍光灯は、がっさっと、ぐちゃっと、ぼさーっとつっ立てられていた。

各メーカー入り交じって、その昔教室の後ろにあった『おそうじ道具入れ』の中に、雑巾モップとほうきがぼっさっとぐっちゃっと立っている様を思い出してしまった。ミドリ電化首脳部もしくは、売り場主任に「君たちはちっとも売れないんだから」と決めつけられているように思えた。

そう、ちょうとさっき観たテレビドラマ、仲間由紀恵主演の「ごくせん」の3年D組のようであった。

蛍光灯たちは、無言でこちらをぎらっと観た(ような気がする)。その内の一本が

「おめ〜、何なんだよ」と言った(ような気がする。)

「私か?私はお前達を買いに来たんだよ」

と私は蛍光灯たちに(頭の中で)話しかけた。(続く)