286話 オレンジ色の蛍光灯はいいぞ 2

「笑わせるンじゃねえよ」と蛍光灯の一人が(正確に言えば1本か)3年D組の『つちや』風に言った。

「誰が、このミドリ電化伊丹店で俺達を買いに来るってんだよ。この置かれ方を見ろよ。ただ突っ立ってるだけじゃねえか。どこのメーカのどういうものか何て全然アピールしねえ置き方じゃねえか。誰も俺達になんか期待してねえんだよ!」

私はおもわず後でひとつにくくっている髪の毛を仲間由紀恵風に左右に「お下げ」に分けると(ウソ)、蛍光灯たちにヤンクミ風に言った。

「ばかやろう。お前ら、一本一本のかけがえのな人生じゃねえか。もっと大事にしね〜か。」

蛍光灯「でもよ、隣の売り場を見てみろよ。パナソニックのパルックなんて、厚紙にきれいに印刷した箱にひとつひとつおさまっているンだぜ。俺達を見ろよ。一応四角くはなっているけど、ただの段ボールでくるまれているだけだぜ。それに上も下も開きっぱなしだ。ちょっと振り回したら、すっぽ抜けて飛んでいってしまうんだ」

「お前ら何もわかっちゃいねえ!!!」

蛍光灯たち
「・・・・・・・・」


「いいか、良く聞け。一般の家庭はな、だいたいが一部屋に照明なんてのはひとつなんだ。広めのリビングでもせいぜい二つだ。パルックはな、そういう部屋にひとつ二つのところに行くんだ。」

蛍光灯たち
「・・・・・・・・」


「お前らが使われている所がどこか、知っているのか?オフィスだろ、商店だろ、学校だろ、病院だろ。たくさんの人が集まってくるところを確実に照らしている。それがお前らの仕事なんだ。」

「だからパルックのように一か所二か所ってえ訳にはいかね〜んだよ。ちなみにミュート大阪健康道場の場合はな、8か所で16本だ。いいか、たくさんの人が集まる所の照明ってやつはな、取り替えに時間がかかっちゃならね〜んだ。お前らを一本一本箱から出すなんてめんど〜なことをやっていちゃいけね〜んだ。お前らのように、横っちょから指で押すとさっさと取りだせるっていうのが、人様の役に立ってるんだよ。」(続く)