287話 オレンジ色の蛍光灯はいいぞ 3

蛍光灯

「だけどよ、先生。蛍光灯ってのはよ、白っぽく光るもんじゃねえのかよ。俺を見ろよ、何を考えたのかオレンジ色なんだぜ。トイレや浴室の電球の色に光るんだぜ。こんな色の照明がどこのオフィスで病院で学校で使われているっていうんだ。ただでさえ売れないサイズなのに、俺なんかこんな色に生まれちまって。 俺なんか誰も必要としてねえんだよ〜!!」

もしこの蛍光灯に足があったなら、叫ぶと同時に走り出したであろう。そしてミドリ電化伊丹店のかたわらを流れる、猪名川の土手を走るであろう。私はお下げ髪をゆらしながら、彼を追いかけたであろう。そして走り疲れて立ち止まり肩で息をする彼をみつけて、ゆっくりと近づき、後ろからさらに言葉をかけたであろう。

※実際には、蛍光灯はただ置き場でぼさっと立っていただけだし、私は売り場でぼけっと立っていただけではあるが、二人の脳裏にはそのようなドラマが展開していたのである。


「お前、うちの道場に来ないか。。。。」


「えっ・・」


「うちの道場はオフィスビルなんだ。蛍光灯が16本いるんだよ。
 だけどな、畳敷きなんだ。
 壁も薄い茶系統に張替えたんだ。
 家具も茶系統のカラーボックスや本棚を入れて
 真っ白な蛍光灯じゃ温かみが出ないんだよ。
 
 お前なんか必要ないなんて誰が決めたんだ。
 お前を必要としている場所があるんだよ」

「先生〜 (T_T) 」

私、店員に
「この蛍光灯16本下さい」
店員
「あっ、すいません。在庫はここにある4本だけですね。取り寄せますか」

「中途半端は大嫌い」のはずのミドリ電化さんであったが、オレンジ系統蛍光灯の在庫は実に中途半端だったのである。

かくして4本の蛍光灯のみ、和紙を張っていない道場下座の二か所に取り替えてみた。ドアを開けると最初に目に入るあたりである。

非常に落ち着いていい雰囲気である。Oさん曰く

「津田先生、シックになりましたね」


※ここ3日の日記は、「ごくせん」をご覧でない方にはまったくおもしろくなかったかと思いますが、悪しからずご了承下さい。