290,291話 引っ越し1、2

2005/03/12(土)
290話 青パンダ軍団突入ス

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鉄壁の城壁をいともたやすく突破したサカイ軍団は、マンションエントランス、入り口ガラス戸、エレベーター隣接壁面、エレベーター内部、その他に「パンダマーク」の入った青い巨大段ボールをすばやく貼り付けて、壁面の保護対策=「引っ越し花道 青いパンダの切り通し」を作り上げると、8時29分ついに我が家に突入してきた。

実に心憎い演出ではないか。昨日の時点では、NHK連続テレビシリーズ「わかば」木曜放送分をあきらめていた筆者であった。しかし、テレビの時刻表示が29分ということはすでに29分を越えている、ということで、つまり「放送はほとんど終わっている」ということなのである。

これが8時15分より前、ということであれば、放送開始前なので神経を「引っ越しモード」に切り替えれば問題ではない。

しかし、これが8時19分とか8時24分であった場合には大問題である。19分の場合は「起承転結」の「起承」ぐらいの段階であり「これからどうなるの、どうなるの」という期待がふくらんでいる時間帯である。そして8時24分というと「起承転結」の「転」の段階である。28分から29分に姿を現す「明日の放送を絶対に見たくさせるラストシーン」に向けての話の転換点がこのあたりでラストシーンに向けての伏線がこんもりと登場するあたりである。

それら「魔の時間帯」をさけて突入してきたサカイ軍団の指揮者は実に賢明である。切れ者である。私は予想外に全部見れてしまった「わかば」に満足し、30分の遅れを一言もとがめることなく、満面の笑顔でサカイ引越部隊を迎えたのであった。

仮に、これが8時24分あたりであった場合は逆上した私は「何ですか、8時に来ると言ったではありませんか。こちらは早くから準備して待っていたのですよ。引っ越しが遅れたら引っ越し先での作業が遅くなるじゃありませんか!ええい、責任者出てこい!」と渋面、怒り心頭、青筋を立てて文句の4〜8言ぐらい言ったかもしれない。

「場所が分からないんだったら、電話で確認してくればいいでしょう」
とぐらい言ったかもしれない。

でも言わなくて良かった。朝のうちに電話台を移動していたのだけれど、その時に電話のコードが外れていたのである。(その30分後にきづく。こっそり直した)サカイさんはもしかしたら一生懸命こちらに連絡を入れていたかもしれない。しかし、そういうことは一切口にしないサカイ軍団部隊長は実に優れた指揮者である。

この日記を読む「直接人とかかわる仕事」に従事される皆さん。お客さんの文句というのは、あなた自身の対応に問題がない場合も多いのですよ。文句を言う人自身の生理的、心理的な状況次第で100点にも0点にもなってしまうのですね。



291話 マンション事情

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この部隊長は長尾さんと言うらしい。しかし、ここまではちゃかして書いたけれど、この長尾さんは本当にものすごい引っ越しのプロだったのである。数分後からそのことを思い知ることになる。

我がマンション、伊丹パークホームズは引っ越し屋さんにはあまり喜ばれない構造になっている。3つの棟で1つのマンションになっている。そしてスキップフロアである。

スキップフロアって4ご存じだろうか?このマンションで言うと、最上階は8階だが、エレベーターは1、4、7階にしか止まらない。その階にしか「共有廊下」がないのである。

2、3階ならびに5、6、8階の住人は1,4,7階の共有廊下から上下に伸びる階段で1フロア上り下りして我が家の玄関へと至る。つまり「1、4、7階の住居以外は、自分の部屋の外側を他人が歩かない」構造になっているのである。プライバシーを重視するそういうマンションが好まれた時代に建ったのであろう。

マンション開発業者は「売れそうなマンション」を優先して考え「引っ越し屋さんにもこんなに便利❸」ということは一切考えないであろう。

そして我が家はその7階エレベーターから伸びる共有廊下から最も長い距離を歩いた所にある階段を下った6階に位置する。

このマンションに来る前は、まだ長男一人しか子どもがいないころ。四畳半と六畳二間の実にこじんまりしたマンションであった。こういう間取りで「マンション」と名乗るのも申し訳ないぐらいなのだが、住居名が「大野マンション」となっていたので、私が「マンションだ」と主張したいわけではないことはご理解頂きたい。

そういう間取りだったので、家具と言っても知れている。千冊を越える蔵書も、尼崎の実家の方に置いていてた。(今はこのマンションにあり、さらに数は増えている)

距離も尼崎と伊丹をくだんの「産業道路」を五キロ北上すればおしまいよ、という簡便な短距離引っ越しである。にもかかわらず午前中に始まった引っ越しは、午後にマンションで作業を開始して・・夕方になっても終わらなかった。

とても終わりそうもないぞ、ということで同じ引っ越し会社の他のスタッフが数人応援を要請され、助っ人としてやってきて何とか終わったという感じだった。

これは前の引っ越しやさんが悪かった、と言いたい訳ではない。引っ越し屋さんだってプロである。家具の量を見ればおよその所要時間などは割り出すであろう。しかし、マンションの構造が引っ越し屋さんのプロの勘を狂わせたのであろう。それぐらい時間がかかってしまったのである。


さて「長尾」突撃隊長ひきいる、「引っ越しのサカイ津田家引っ越し部隊」の活動が始まった。車に一名。エレベーター〜7階廊下〜階段に2名 屋内は長尾隊長一人である。

長尾隊長は、「前金になっております」と引っ越し代金を受け取った。

「金さえもらえばこっちのもんよ。適当に仕事をしとけばええねん」

などという態度はみじんもなく「頂いた以上は、中途半端な仕事は致しません」というプロの技がそれから繰り広げられるのである。