303話 川の話 4 

「京阪乗る人 おけいはん」という摩訶不思議なキャッチフレーズの京阪電車で伏見に向かう。キャッチフレーズも変だが、色も不思議な京阪電車である。

学校の図画工作で絵を書くことになって、まず緑(ビリジアンと絵の具に書いてあったと思う。なぜ小学生向けの絵の具に「みどり」と素直に書かないのだろう。知っている方がおられたら、ぞひ御教授願いたいと思う)を塗り、その筆を空き缶か何かの洗い水でぼしぼしと洗う。続いて白を塗り、その筆をぼしぼし洗う。すると洗い水は白みがかった緑色になる。さらに白を塗った筆を洗う。ますます白みがかった緑になる。この2色で上下を塗り分けたのが京阪電車の基本色である。

阪急電車沿線で育ち、小豆色の上品な外観と、木目を基調にした高級感のある内装の阪急電車が電車だと思って育った筆者には、京阪電車の色というのは、実に不思議に見える。

と、これは「鉄道マニア日記」ではないので、話は戻る。

坂本竜馬ごひいきの宿、寺田屋伏見桃山駅ではなく「ちゅうしょじま」駅の近い。

「旺文社 人物グラフティ 坂本竜馬 青春と旅」という写真中心の資料集がある。92ページには明治のころと思われる寺田屋の古写真が掲載されている。確かに、寺田屋から道を隔てて川になっている。道の川側が7段ほどの石段になっていて、そこに三十石船というのだろうか?屋形船のような屋根付きの船が写っている。小舟も数台写っている。川幅は三十石船が四艘並んでも大丈夫なぐらいはありそうだ。そこそこの水量もうかがえる。

で、中書島で下車した筆者は、駅の北にある寺田屋には向かわず、南側にある淀川本流に向かうのである。なぜなら、寺田屋の前に船着き場などないことを知っているからである。初めて寺田屋に行ったころは、坂本竜馬は好きだったが、カヌーは知らなかった。だから寺田屋と現存する川の距離、川幅ならびに水深などに関してはまったく詳細に検討していない。はっきり言ってよく覚えていない。しかし、寺田屋古写真にあるようなとうとうと水をたたえた景色はまったく覚えがない。