307話 人は予測することで生きている1

人間は予測する生き物である。次に起こることを予測し、それに対処する身構え心構えを整える、という行為を連続的にくり返しているようである。そのことによって、行動は効率化し、スムーズに動け、ストレスはたまらない。しかし、その予測が外れると、動けなくなり、パニックを起こし、ストレスの固まりとなる。

このことを実感したのは、我が『味覚』によってである。

朝、コーヒーをたてる。少量の豆では美味しくないので、それなりの量の豆で入れる。大人二人が飲む。しかし、大人二人は朝から2杯も3杯もコーヒーを飲まない。するとカップ1〜2杯分ほどのコーヒーが余る。コーヒー一杯分のみが入ったコーヒーメーカーをキッチンに置いておくのは邪魔である。ガラス面にコーヒーだってこびりつくかもしれない。したがって、余った事が確定したコーヒーは早々にマグカップ大の大ぶりのコーヒーカップにお引き取り願い、そのままキッチンに置かれる。

飲みたくなった時に、飲みたくなった人がどうぞ、という訳である。

子どもが3人いる。3人ともスポーツをする。野球に空手にスイミングである。いきおい夏場のお茶の消費量というのは莫大なものになる。天候により、また野球の練習時間の長さや試合数などによってさらに消費量は増大していく。足りないということは許されない。したがってめいっぱいたくさん沸かす、ということが必要になる。麦茶の麦もいきおい大量に投入される。

「お茶を沸かす際にコンロの火を止めるのを忘れる」というのは人間の常である。連日連日湧かしている日々の中で、お茶の火を止め忘れることだってある。そうすると水分は多量に蒸発し、麦茶成分は多量に抽出され、非常に濃い茶褐色の麦茶になる。濃くたって苦くたって麦茶は麦茶である。