315話 プロジェクトX その1

プロジェクトXは好きな番組だ。中島みゆきのテーマソングは、カセットにエンドレスで録音し、カーステレオで「ドライブに出かけるテーマソング」として使っていたこともある。
♪デデンデデンデン 風の中のす〜ばるぅうぅうぅうぅ〜
と、BGMにすると、単なるドライブが「人助けや社会のためにいま出動ス」というムードになるではないか。

過去放送された中では「沖縄の首里城修復。赤瓦を復元させる」というのがお気に入りで親子で正座して繰り返し見ていた。「父の遺志を継ぐ息子の奮闘」というのが、親父となり、また近年親父を亡くした自分の琴線に触れたのかも知れない。

正座するのは、番組に敬意を表しているのではなく、登場する方々に対しての敬意である。番組の方は、ねつ造とは言えないまでも、面白くするために大げさな表現をして今袋叩きにあっているようである。

とんでもなく悪い学校が、コーラス部の奮闘で、コーラス部はこんなに立派な成績を上げるほどになり、今ではこんなにいい学校になりました、というような筋立てらしい。(見ていない)その「とんでもなく悪い学校」というのが、「実はそれほどでもない学校だった」ということらしい。

「毎年80人の退学者が出た」(田口トモロヲ風に読んで下さい)

というのが、

「ウソだった」(田口トモロヲ風に読んで下さい)

というようなことだったのである。


プロジェクトXは「名もなき男達への賛歌」というようなコンセプトである。ドラマチックな逆転劇が内包されている必要がある。そうでないと面白い作品にならない。

品行方正なとってもいい学校がありました。そこへとってもいい先生がやってきました。先生はコーラス部をつくりました。集まった生徒たちも素直で明るいいい生徒たちばかりでした。生徒たちはすくすくと成長し、大会でもとってもいい成績を上げました。めでたしめでたし。

この番組では、感動のしようがない。

けっこう悪い高校がありました。そこでコーラス部ができました。一生懸命練習するようになりましたが、世の中そう甘くない。まったく入賞できませんでした。そして学校も悪いままでした。

これでも番組になりそうもない。(続く)