319話 NHK受信料不払いには反対 3

しかし、続きがあるのである。それがドルフィンプロジェクト2である。こちらはホントにドラマだった。

ということで再びプロジェクトX風に



ボランティアの支援を受けて、とりあえずイルカたちの危機は脱した。しかし、いつきれいな海が甦るかなんてことは、当時誰も分からなかった。こういう24時間救援体勢をいつまでも続けて行けるわけもない。


館長、苦悩した。そして受話器を取った。全国のイルカのいる水族館に電話をかけ続けた。

館長
越前松島水族館です。今回の重油流出事故で今、これこれこういう状態になっていますが限界がです。おたくの水族館でイルカを何頭か引き受けて頂けないでしょうか。スタッフも出せません。お金も出せません。車も出せません。全てそちらでやっていただかなければならないのです・・・。」

−館長の電話に、全国の水族館が立ち上がった。続々と受け入れ先が決まり、ウエットスーツのイルカ飼育のプロの男達が、越前松島水族館に駆けつけた。(あっ、駆け付けて来た時は、きっとウエットスーツ姿ではなかったと思います。ジャージだったかもしれない。でも筆者が目の当たりにした時は、プールでウエットスーツ姿だった人を「あっ、この人たちが駆け付けた水族館のイルカ係の人たちなのだ」、と認識できたので、こういう言い回しになりました。)

一つ問題があった。昨年、この水族館で生まれた赤ちゃんイルカがいた。名前もまだついていなかった。甘えん坊で、まだ母イルカのおっぱいを飲んでいる生後半年のイルカだった。生後半年のイルカの移送というのは、常識では考えられなかった。イルカ飼育のプロ達の意見は「移送のショックで90%の確率で死亡」というものだった。男達はその10%に賭けるた。

♪風の中のすぅばるぅうぅうぅうぅ〜 砂の中の銀河ぁあぁぁぁああ〜

プロジェクトは2日がかりで行われた。

初日。イルカ飼育のリーダー、まっちゃんは、女性スタッフ2名とともにイルカ曲芸をする場所に立った。手には曲芸に使う大きなループ。女性スタッフはご褒美の小魚の入ったバケツを持った。

水を一杯に張ったプールからイルカを担架に積み替えるために、いつものショーをさせるのだ。プールのかたわらには特製イルカ用担架をセットしたクレーン車。その向こうには海水を入れた水槽を乗せたトラック、そして受け入れ先の水族館スタッフが待機した。

いつものショーが始まった。ボランティアたち、固唾を飲んで見守った。ジャンプ、輪くぐりと進んでいった。そしてイルカが飼育係の立つ喫水の浅い平らなスペースに腹這いにイルカが乗り上げた瞬間、数名の男性スタッフ達がイルカを押さえた。ヒレの入る穴のあいた特製の布担架に乗せた。クレーンで釣り上げた。ボランティア達、泣いた。