342話 空想

むき出しというのは味気ないものである。おそらく人間に与えられた特性の一つに「空想する」ということがある。他の動物にも与えられているかもしれないが、おそらく圧倒的に少なかろうと思える。その差は読売ジャイアンツ重量打線の年俸総額と、楽天ゴールデンイーグルスの2軍のクリーンナップの年俸総額ぐらいの差はあろうかと思う。ようするに「けたが違う」のである。

この「空想」というのが使いようで実に人間を元気にしてくれる。空想、あるいは「・・・と思いこむ」というのが心理指導の核となる。

整体の伝説の名人、野口晴哉先生は、その著書の中で「空想の力は意思の力の自乗である」と説かれる。ここまでは「潜在意識で成功しよう本」ならどれでも書いている。しかし何十万の人を元気に導いた野口先生は続きが違う。「病気がありありと治ったところを空想しましょう」とはならない。

病人の心は不安に満ちている。そこにいくら「大丈夫」と言葉を投げかけても不安一層つのる。そこで野口先生は不安でいっぱいにさせておいて、その一角を崩すということをされていた。くるっと心理を転換させてしまうのである。そのことを「闇夜の向こうに一点ともる灯りが見えると、人は力が出る」というような解説をされている。

印象深いエピソードにこういうのがある。正確な文言は覚えていないので、私の記憶で脚色して書く。

ある癌の人が野口先生の野口先生の整体を受けた。むずかしい顔であれこれ調整した野口先生、最後に「やっかいな癌だ。僕が観ても治るまで20年はかかる」それを聞いてその人はがっくりきた。肩を落としてとぼとぼと帰った。野口先生でも治せないような癌なんだ。。ん?んんん?20年かかる?20年、20年、20年生きていられるんだ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」

それでその人は、そこからホントに元気になったという。