343話 犬を見に行く

このたび、犬を飼おうということになり、明石の明南荘という「柴犬専門店」へ家族で犬を見に行く。

事前にホームページで、そこにいる犬たちの顔は見ている。初めての飼い犬なので「メスがいい!」ということになっていて、今はあいにくメスはいないのだけれども、どういう人たちが育てているのか、なかなかよさそうだけれども、やっぱり直接会って話をしないとね、それに育て方のアドバイスなんかも聞かなくッちゃ、ということで今回の訪問になった。

折からの雨の中、阪神高速を北上、そして兵庫県へ入る。

さて、我が家は、家族としては「ユニバーサルスタジオ・ジャパン」に行ったことがない。親父が(私のこと)せっかくの休みなのに、そういう人工的なお金を使わないと何も楽しめないところに行くよりも、と山へ行ったり川へ行ったりするので、機会がなかったのである。

阪神高速湾岸線を西へ走り、観覧者が見えてその向こうに、趣味の悪い巨大なラブホテルのようなものが見えてくる。高速の降り口にも「USJはここで降りろ」と出ている。だから今日の今日までその「悪趣味巨大ラブホテル」のような建物が「USJ」だとばかり思っていたら、先日の社会見学でバスガイドさんから聞いたとこどもが「お父さん、あれは下水処理場とごみ焼却場やで(浄水場だったかもしれない)」と教えてくれた。USJは、高速の北側になるのだそうだ。

ええええええ!

そうだったの????

ちょうど、その悪趣味超巨大ラブホテルが出来つつあった時期と、USJを作っていた時期が同じだったので、そうとばっかり思っていた。高速を運転しながらなので、その建物の周辺などをじっくり観察できなかったせいもある。たしかにその変な建物と反対側にUSJはあった。


湾岸線を走る機会がある、という方は、一度じっくりご覧になって下さい。(もちろん運転中の方はじっくりご覧にならないで下さい。)本当に趣味が悪いです。下水処理場を「いかにも工場、処理場らしい外観」にしなければならないとは思わないけれど、こればっかりは何と言っても趣味が悪いとしかいいようがない。「おとぎの国のお城」をイメージしたけれど、結局は「通天閣にぎたぎたした色のうき輪をひっかけて、てっぺんに金色の玉をつけたような」建物なのである。


おまけにそこで高速のパーキングと折口を間違えて、その処理場の間近まで行ってしまった。遠目で見ても変だけれども、間近に見てもやっぱり変なのである。このデザインに税金が使われたと思うと、納税の意欲が一気に減退してしまうというような、「何考えて作ったの」という、そういう意味では「一見の価値が有る」建物です。


などと憤慨しながら明南荘へ。土佐犬のように迫力のある親父さんと、柴犬のようにきりっとした顔の娘さんのお二人が迎えてくれて、多数のワンちゃんを見ながら、色々とお話を伺う。

犬を特に飼いたがっているのは小学校5年の長女だけれど、飼ってもいいかな、というのは小学校2年の次女のためというのも実はある。次女は末っ子で、三世代で住んでいる家の中で、自分よりも年下という相手がいない。自分がめんどうみたり、かばったりする対象がいないのである。

「犬というのは、自分よりも上か下か、というのに敏感なんやで。マイが怖がったら、犬はマイを自分の子分だと思って、言うことを聞かなくなるんやで」とおどかしておいた。

柴犬を前にマイは、70%ぐらいは「かわいくてしょうがない」。30%ぐらいが「ちょっと恐い」状態だったのである。そして彼女なりに犬たちに「毅然とした態度を取るべし」と、座って犬をなでなでしたり抱っこしたり、あるいはじゃれつかれながらも、背筋を懸命に伸ばし、実に「きりり」としているのである。その「きりり」は今まで彼女が家の中では決して見せたことのない「きりり」で、実にいい「きりり」だったのである。

まだ産まれ立てで、目が開いていないメスの一匹を仮予約して、帰宅。