355話 あと10センチあれば・・・

本当は、すでに「スルット関西/おそるべきフォース」の話の続きをすでに書き終えているのであるけれど、今日は中一の長男と紀ノ川に川下りに行ったので、そちらを書く。

スタートは橋本のつもりだったのが、朝にぐずぐず。駅に行くと電車は出た後。連絡も今一つで、目的地の橋本に着くのがずいぶんと遅くなりそうである。そこで途中下車して高野口から下ることに変更。ところがこれが裏目に出る。

高野口から紀ノ川まではあまり近くはない。カヌー一艇にライフジャケットやらお茶やらなんやらで、荷物はけっこう大量にある。重い。駅前でタクシーを拾っていこう、ということだっただけれど、駅は無人だったし、駅前も人気があまりなく、タクシーの陰も形もない。

やむなく歩く。「これだけ歩いたら、川を下っていく時の爽快感が倍増だぜ」と息子と励ましあう。「なんてったて、自動的に流れていくんだかんね」「そうそう」「ちょこちょこっと漕げば、歩くよりも早く進むんだかんね」「そやそや」

ようやく九度山橋横の堤防に到着。堤防を超えて川原を歩くのだけれども、紀州の国を代表する大河、小説にもなった大河、やはり川原だけでも立派なものである。身長よりも高い草が繁り、木もはえている。その広〜い川原を通ってようやく川に・・・、着いた・・・ら、驚いた。なんと水の少ないこと。

我が愛艇のカヌーは、インフレータブルタイプ。ようするにカヌーの形をしたゴムボートである。浮力は非常に高い。だから少々水深がなくったて、水底がフラットならば10センチもあれば悠々と進む。しかし、そのフラットな10センチがないところだらけなのである。

そうである。今回の川下りにあたっては、下見を2回も行なった。しかし、それは大雨後の増水時であった。「増水してもこの程度なら大丈夫」という状況だったのだ。その後の小雨で川の水はどんどん減ってしまったらしい。そういう場所は、カヌーを引っ張って川の中を歩く。ライフジャケットで完全防備して、水深5センチの川で四メートルのカヌーを引き摺って歩くのは、楽しいものではない。

川原の石を見ると、それこそ現在の水面プラス10センチぐらいのところまでが、表面に薄く白く乾いたようになっている。それは最近まで水の中にありました、という状況証拠である。長く川原のもっと上の方にある石は雨で洗われるからなのか、きれいである。ああ、あそこまで水面があればとため息が出る。

おだやか〜な川だけれども、それでもところどころごく短い急流部分がある。瀬と言う。これは川下りのアクセントで楽しい部分だ。ジェットコースターのようにぐわわん、ぐわわんと上下にゆれながら一気に下る。ところがそういう所で底をするのである。「いくぞ〜 !!!」ずずずずずず。
大石や岩に引っ掛かるのである。その度に片足を川に突っ込んで、踏ん張って進むのである。水上キックボードである。

キックボードごっごをしようと思ってやるのなら楽しいかもしれないが、川を優雅に下ろうと思っている時には楽しくない。ということで、川下り前半はまったく亀の歩み。腹は減る。

2時前に、先日「超格安桃」を手に入れた「道の駅」ぞいの川原に到着。さっそく上陸。

親子とも食道へ直行することに意見が一致。親子共に「和歌山ラーメン」を頼む。予定の半分しか来ていないけれども、今日の川旅はここで終えることにする。

ずずず&キックボード、お陰でカヌーの中は水浸し状態で快適とは言い兼ねる紀ノ川本格デビューであった。・・・が、後10センチの水深があれば、実に快適であったろうことは間違いない。水量を見計らって再チャレンジを誓う。

地元特産品売り場へ立ち寄る。今日は激安桃はなかったが、先日よりも大振りな桃がちょっと虫食いなら半額であった。5つで250円!ひとつ50円。ふた箱買う。きゅうり4本100円も買う。プチトマト100円も買う。完熟ちょっと熟れ過ぎて少し皮がやぶれかけ、7つ入って100円トマトも買う。もともといやっちゅうほど重い荷物の上に、買い過ぎである。紙箱二つ分である。親父は、カヌーの入ったリュックとパドルで手一杯なので、それらは全て長男の分担となる。

2キロほど離れた笠田駅近くの温泉『蔵の湯』へ行く。造り酒屋さんがやっているらしい。酒蔵のようなおもむきのある建物で、レストランやら地ビールが飲めるようなところもあるようである。筆者は下戸なのでアルコールの方へは行かず、お風呂へ直行。屋内2種類のお湯に露天風呂と水風呂を行き来する。実に気持ちがいい。ほにゃほにゃになるまで入る。

スタートはどうなることかと思ったが、尻上がりに快適度の上がる今日25日、親子で過ごす夏休みの休日だったのである。