389話 うれしい一日②
エッセイ的読み物は、その大学時代のミニコミからであるから、エッセイスト歴は24年ということになる。
その時の師匠(これももちろん勝手にこちらがそう決めただけ)は椎名誠先生である。紙やインク、本という体裁など、貴重な資源を使って出版される本というものは、まじめで役に立つことを世間に知らしめるためにある、というような先入観をうち破り、「ゆでたスパゲッティにかつをぶしをどばどばと入れ、大量にマヨネーズをぶちまけ、しょうゆをたらしてむはむはと喰ったのである」というような内容でも人前に発表したっていいんだ、ということを知らしめて下さった先達である。
次の師匠は東海林さだお先生である。先生からは「ものごとを深く洞察することの重要性」を学んだ。
「カツ丼と親子丼はどっちが偉いか」というような問題も、東海林先生にかかると実に奥行きのある意外性のある納得性のある話となり紙面に展開する。ものごとを見る時に、表面だけを見てはいけないんだよ、そこに伏流するものをみなくっちゃ!という透視的視点というものの存在を知らしめて下さった先達である。
そして三代目が内田先生である。
内田先生から何を学んだかということはまだ分からない。卒業というものがあるかどうかは分からないが、何を学んだのか、ということは卒業した後に明らかになるものなのである。すべては今進行しつつあり、またこれから生まれてくるのである。
しかし、それにしても、「勝手に師匠・三代目」に直接お会いできることができるとは。
阪急梅田でF井さんと待ち合わせて、東京道場の山上指導員曰く「日本一美しいキャンパスと聞いてますよ、津田さん」という神戸女学院のキャンパスに向かうのである。そこにはふだんはパソコンに記された文字の向こうに見え隠れする「内田老師」が、生身の姿を現すのである。おお、ナマ内田!(表現の非礼をお詫びします)