405話 にこにこ講習会の2

ブレーキ以外にも動きの質を悪くしているものはある。それは「勘違い」という要素である。

例えば「股関節」(まえ〜に日記でも書いたけど再度書きますね)

足を開いてうんうんと前に曲げる準備体操がある。運動部なんかで「柔軟」とか言って、いまだに後ろからパートナーに押してもらうような大間違いが大手を振っている。

っと、今はそのやり方の話ではなくって、股関節そのものの話だった。

足の開きが悪い人をもって、クラブの顧問の先生やら先輩やらは「股関節が硬い」と言う。

その時に指す「股関節」というのはいったいどこかと言えば、「内股の腱の張り」を指している。その内股の腱と「股関節の運動」というのは大いに関係はあるけれど、「内股の腱の張り」=断じて股関節ではない。

さて、あなたの目の届く関節を眺めてみよう。指、肩、膝。竹で言えば「節」に当たるような部分である。風邪引いて節々が痛い、というような際にはこの関節の痛みのことを指している。ごつごつとしている。骨と骨という「棒状」のものの連結部分であるから、骨よりも太い。一方の棒の先は球形になり、もう一方の先は球を受け入れる穴状になっている。肩やら膝やら股関節というのはだいたいそういう仕組みである。

内股の張りの部分にそんなごつごつしたモノがくっついていたら、どんなにか不自由なことだろう。

男女の営みの際、向かいあって「ことを行う」とするならば、それは関節のぶつけ合いということになる。関節のぶつけ合い!最愛の彼・彼女と例えば向かいあって膝同士をぶつけ合う様を想像してみよう。痛いだけじゃないか!

だいたい内股に関節がついていたら、赤ちゃんはいったいどこから出てればいいんだ。陣痛に押し出され、産道を通って「そろぞろ出口も近いぞ」というところで、いきなり関節に道をふさがれるのである。人類はすぐに滅亡していしまうであろう。

骸骨の姿を思い出して欲しい。骨盤の左右の張り出した部分の下にぶら下がっているのが足である。股関節というのは外側についているんですよ。

ようするにお尻というのは脚だと思えばいい。

自分で見る自分の足というのは、そけい部から生えているように見えるけれども、横から見るともっと上についていることが分かる。

股関節から足の裏まで、脚の長さというのは平均すると身長の53%を占める。過半数である。つまり脚を動かすということは「身長の半分以上の長さの棒を動かす」というのが正しい認識である。しかしせいぜい身長の40%台の意識しか持っていない人がほとんどである。

長い棒を長いと思ってふれば疲れないが、長い棒を短いと勘違いして振ると身体に無理がかかる。

そういう「身体運用上の誤解」「思いこみ」「錯覚」がけっこうある。

そういう誤解をにこにこマッサージはほどいていく。ブレーキを外し、誤解を解いていくと、身体はもっともっと楽にスムーズに気持ちよく動く。それも「ベテラン施術師による名人芸」によってなるのではなく、「今日初めてならいました」というおじさん・おばさん・おにいちゃん・おねえちゃんの手によっても効果が十分に出せるのである。

その差を体感した時の感動は、文字情報では決して伝わらないのが残念だ。だから講習会に参加される方々を多数目の前にすると、今から起こる身体の感動を共有できる手応えに、私はすこぶるご機嫌になるのである。