406話 かにの思い出
最初に言っておきますが、今日は何のためになる話も書いていませんのでそのつもりで。
鳥取のNさんから「カニ」が送られてきた。そういえば昨日新住所確認の電話がかかっていた。
「いえいえ、そんなお気遣いはけっこうですのに」
「いえいえ、地元の市場に行けば安いのがございますのですのですの」
私は学生時代を日本海の島根県、松江市で過ごした。通算6年の松江生活のうち、5年間を「日本料理屋」でバイトしていた。
山陰の冬はカニのシーズンである。だからといって「松葉がに」だの「ずわいがに」というようなメジャータイトルのカニは地元の料理屋ではそうそう扱わなかった。姿はよく似ているけれども、メジャータイトルがにが、その価格が万単位なのに対して、地元マイナーがには百円単位の価格で、すこぶるうまいカニ達がいたのを記憶している。
リーズナブルなカニ達であったので、我ら学生バイト達にも振る舞われることも多々あった。美味であった。私の冬の青春は、カニに彩られていたと言っても過言ではない。(過言なような気もするが)
我が家に「クール宅急便」で到着したカニたちは、またそろりそろりとハサミを動かしているという「まだ生きてるやんけ」という特急鮮度である。
通常帰宅が夜11時を過ぎる、もしくは実家に泊まるということの多い毎日であるが、本日に限っては比較的早い帰宅である。
今9時16分。あと20分もすれば自宅の食卓の前に筆者は座っていることであろう。(今は帰路の南海電車の中である)
カニ達が私を待っている。ああ、青春の思い出のリーズナブル山陰地元ガニ。