408話 覚悟 2

なるほど。

今日の場合の「タクシーに乗る」という行為は、「時間を買う」という背景があったわけだが、その部分に固執してしまうと、その後の快適さは失われてしまう。

「さっさと来てこそのタクシー」

ということになり、それ以外は価値判断から除外されてしまう。

100台を覚悟する、という条件が加わることによって、待ち時間もきわめて愉しくすごしたのである。

さっそく乗り込んだタクシーで、このネタ「50台目で来た」を運転手さんに振ると、さっそくその道の道路事情、運転手さんの予測する標準待ち時間予想、駅待ち時と流し時のタクシー運転手の精神的疲労、お客さんが多い「流れ」論、などなど駅までの5分6分の間に客と運転手はおおいに盛り上がったのであった。

駅で運転手さんは客のこの後の安全無事を願い、客は運転手さんの商売繁盛・交通安全を祈り、互いに10年の知己のように、潤む目で別れを惜しんだのであった。

もちろん、道場の予約時間にも間に合った。

自分の希望通りにことが運ばないということも、覚悟しだいで楽しめるものにと変わるものでなのである。

何もかも思った通りに行ったら、実につまらない。予想もしない展開が面白いのである。

しかし、今回のようにさしたる準備もしていない「タクシー待ち」というような行為ならばそれはできる。しかし、相手がいて、自分が「良かれ」とあれこれ考えて、準備などをしている場合は、なかなかそういう心境になるのは難しい。次なるテーマである。