443話 2087

一昨年の暮れあたりから昨年の初めあたりには、遠藤喨及先生のタオ指圧の本を立て続けに読んでいた。

遠藤先生は、既存のツボの位置にとらわれず、ひたすら「受け手が押してほしがっているところ」を想像しながら指圧を試みているうちに、いつしか経絡というものが具体的に見えるようになり、それをもとにタオ指圧というものを作り上げられたそうである。


私が会員の方に行う身体調整は指圧ではないけれども、遠藤先生の「相手にひたすら共感して手を当てるうちに経絡が見えるようになった」というところに感動を覚え、見えるものなら見たいなと思った。


遠藤先生が「相手にひたすら共感して」「受け手がもっとも押してほしがっているところを押さえる」方法をやりはじめて、経絡が見えるようになるまで3年ほどかかったと書かれていた。


指圧というのは、すべて手作業だから(ってあたりまえだけど)一人あたりの施術時間はけっこうかかる。筆者は、遠藤先生の師匠である増永静人先生の著作に感動して「この方の指圧が受けたい」と問い合わせをしたことがある。(15〜6年以上前の話)

残念ながら増永先生はその時点ですでに故人となられていたということが分かったが、せっかくだというので、東京まで出かけてお弟子さんに施術していただいた。


ざっと小一時間はかかったように記憶している。


さて遠藤先生の「経絡の視覚的認識可能状態」に至るまでが3年。休診の日もあったろうが、そこは多めに見積もってざっと1000日。一人1時間で一日8時間と考えると一日に8人ということになるが、やや多めに見積もって一日10人と計算すると、3年で診た人数というのはざっと10000人ぐらいかな、と検討をつけた。


10000人か。


確かに、心を込めて1万人の人に接すれば、経絡が見えるという保証は何もないけれど、何か生まれそうな気がする。


ということで昨年の今頃から『人の身体を感じ・手を添え・整え』た人の数・目標1万人と設定して人数を記録し始めたのである。


このたび、1年が経過して2087人となりました。


最近「人の虚実バランスがわかるようになって、それをよりどころに、人の身体を整える」という意味のことを書いているけれども、経絡が見えるようになった、というレベルではない。


もう少しやさしく表現すると「こういうふうに歪めた方が、実は本人はとっても楽」という「身体のホンネ」のようなものが分かってきた、ということが比較的実体を表した表現になる。


これは道場の講座でやり方を指導させていただくと、どの受講生もほとんどできてしまうので、方法としては的はずれではないということと同時に、そういう「熟練とキャリア」が絶対条件ではない、というレベルのものであるとも言える。


しかしながら、それが見えて来る前とあとでは、人の身体を整える際のアプローチは全然変わったし、調整に要する時間も激減し、効果としては前よりも明確になっている。さらにやや大げさに聞こえるかもしれないけれども、筆者自身の対人関係から人生観まで変化している。


2087人観る前と、それを経た今では別の自分になっているのは確かである。今の形の芽が見えてきたのが1700人〜1800人ごろ。


目標の五分の一での成果としては、満足どころの話ではない。


しかしながら、2000人でこれぐらい満足すべき結果が得られるということは、これが5000人、8000人、10000人となるころには、いったい何がどう見えるのか、見え方が変わっているのか実に楽しみである。


同時に、筆者の人数など比較にならない量と質で、日々多くの人と接しているこの道の先人・師匠・先輩方のレベルというものは、どれくらいすばらしいものなのか、今の自分ではとうてい理解しえない、ということも見えてきた今日この頃なのである。


今の年2000人ペースだとあと4年楽しめることになるけれど、この1年徐々にペースが上がって行っている。そこで来年の今頃までの目標は3000人である。

そうすれば、今年1年で味わえたものの最低でも1.5倍、実際にはそれ以上のものが凝縮して味わえるのではないかと予想している。


また今年も楽しみである。