469話 古武術の身体操作的トンネル渋滞解消論

トンネル渋滞で「むむっ」と思うのは、その先頭にふん詰まるべき理由がない、ということである。


トンネルに突入する車が「あら、トンネルだわ」っというので少しブレーキを踏む、後続車がそれに合わせて踏む。これが延々と連鎖・連続する。いつしかのろのろとなり、ある時点で停車する。その停車の列の先頭はもともと「ふん詰まる」理由がないので、再び走りだす。その時に前の車と後の車に少々のタイムラグが出る。その差が数十台数百台単位で積み重なると渋滞となる。


前の車が再始動する。アクセルを踏む。少し遅れて後の車が再始動する。アクセルを踏む。その間のギャップがなければ渋滞にはならない。


小学校の体育の時間に「行進」というものがあった。並んでいるところから、「退場」なんていって行進が始まるのである。「足踏み〜、進め!」というので進むのであるけれども、実際に前進するのは一人ずつである。

列の後の方にいる場合は、ざっと20人待たないと歩き出せない。「その場足踏み」で待っているのである。

それが不思議でならなかった。


「全体〜!(全体だよ。一人ずつじゃないよ)進め!」というかけ声がかかっているのに、すぐに出発できないのが歯がゆかったのである。


なぜ「進め!」で一列全体が一斉に進めないのであろうか?


行進中も足踏み中も、どちらも20人で一列になっているのは同じなのである。歩き出せば20人が一列になって一つの生き物のごとく歩くのに、歩き出す時だけなぜ一人ずつになるのだろうか?そこに必然性がないようにず〜っと思っていた。


その思いが、数十年の時を経て、トンネル渋滞でまた甦ってきたのである。


マーチングバンドとかパレードなんかを見ると、楽器を抱えたまま一斉に歩き出すではないか。
ムカデ競争を見れば、やはり一斉に歩き出すではないか。


だからやろうと思えば簡単にできることなのである。おそらく。


ということは、トンネル渋滞の解消は、この「ムカデ競争的手法」を使えば、瞬時に解消するのではないか?ということが言いたいのである。瞬時には無理でも、かなり短時間に解消されるのは間違いない。


前の車が動き出す時に後続車が同時に動き出し、徐々に加速しつつ、速度に応じて徐々に車間距離を開けていく。


かけ声さえあればいいのである。


例えば、カーラジオで一斉に放送する。


「ただいまから、トンネル渋滞解消のために、一斉発進を行います。各車、スタンバイお願いします。スタート時の速度は、時速10キロまで22秒をかけるペースでお願いします。それではカウントダウン、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1 スタート!」


どうであろう。その後徐々に加速のペースを適切に誘導さえすれば、たちどころに渋滞は解消する。(はずだ)


ここで気をつけるべきは、急加速をして、「あ、危ね」というので急ブレーキを踏むような事態を決しておこすべからずということである。急ブレーキを踏むと、後続車が「あ、危ね」ということでまたまた負の連鎖が始まり、渋滞を作ることになる。


見方を変えれば、トンネル渋滞の主たる原因は、先頭車の急激な速度変化、ということになる。


トンネル渋滞というのは、言うなればムカデ競争の先頭部分が、いきなり立ち止まるという現象である。そこで後がつんのめり、わらわらと前の人にぶつかって転倒する。あれとまったく同じ原理である。


と、ここまで「渋滞解消論」を書いてきたが、こう考えると、「渋滞を起こさない」ためにも使えるということが分かる。


ようするに「俺だけは速く着きたい」とすっ飛ばしている輩が、「あらトンネルだ」というので、いきなり減速するからいけないのである。急に遅くするから後続車に負の連鎖が起こる。減速を徐々にしていけば、限りなく渋滞する可能性というのは減少する。後続車が減速、停止に追い込まれるような事態を作らなければいいのである。


ということは、後続車は前の車に追いつかないように走ればいいのである。


トンネルからずっと離れた距離から、全体が徐々に減速して、トンネル突入時に減速しないで済むようにすれば、トンネル渋滞は起こらない。


中国縦貫道、宝塚トンネルを先頭に吹田まで18キロ。


阪神高速池田線、塚本を先頭に5キロ。


何回聞いた渋滞情報であろうか。


渋滞突入前に少しでも前に行っておこうとすっ飛ばすことをやめ、吹田の手前から全体が減速していけばいい。渋滞多発地点の手前から「高速道路」を一時的に「中速道路」にしさすれば、いつ動き出すかわからない車中で、トイレに行きたいと死ぬ思いであぶら汗を流すこともないのである。ストレスも減少する。環境にかける負荷も減少する。


さらにこの論を進めれば、一定区間内のその時点の車両数に対して、何キロで走れば渋滞・停止にはならない、という数値があるに違いないから、それを割り出し、その速度を表示し、その速度で走るようにすれば速度変化を起こさないので渋滞にはならない。


重要なのは、加速をしない、減速をしない、ということである。全体が一つになって動くということである。


そのためには「等速度で動け」ということで、見方を変えれば「うねらない」「ためない」ということである。


おおお!


これぞまさしく日本伝・古武術の身体操作に他ならない。


明日よりまた大型連休。やれば渋滞は一気に減少すること間違いない。さあ、古武術の術理を修練しよう!速度超過を押さえて、急な減速禁止。ゆっくり速度を上げ、渋滞予測ポイントの大幅に後方で徐々に減速する。


日本中のドライバー全員が一斉に参加しないと効果の有無が明白にならないのが残念である。